個人的なまとめです。
露出
ストロボは「当てたところの光を足す」
カメラの露出設定で、定常光の露出が決まる。ここにストロボの瞬間光が足される。 カメラの露出設定が十分暗ければ、実質的にはストロボ光だけでの撮影となる。
ストロボは瞬間光なので、フォーカルプレーンシャッター機※(大半のレンズ交換式カメラ、以下FPシャッター機)では、同調速度以下で調整する限り、ストロボ光の露出量はシャッタースピード(以下SS)に左右されない。 すなわち、定常光とストロボ光の光量比を変えるには、同調速度下でのシャッタースピードとストロボ光量の操作を行えばよい。
※グローバルシャッター機(CCD、α9 III)、レンズシャッター機(大半のコンパクトカメラ)では、閃光速度よりもSSが速くなると光量が徐々に・非線形に減ると考えられる
センサー感度や絞り値は定常光とストロボ光の両方の露出に影響する。
ハイスピードシンクロ(FPシャッター機でストロボ同調速度よりも速いシャッタースピードでストロボ撮影を行う場合に使用する機能、以下HSS)は通常使用しない。 HSS下では、FPシャッターのスリットに合わせてストロボは高速で点滅するように発光する。そのため、HSSには次の欠点がある。
- 光量が減る SSが速くなるほど減る。通常、SSで減少する露出量よりもストロボの光量の低下のほうが大きい
- ストロボへのダメージが大きい 大光量で複数回発光するため。小光量の通常発光であれば数万回は耐えられるストロボが、数百回で故障する
そのため、HSSは基本的に使うべきではない。ISO感度を最低感度まで下げて、絞りこんでもなお露出過多である場合※では、NDフィルターを使用するべきだ。
※小絞りボケを避け、被写界深度をある程度浅くしようとすると、晴天下での日中シンクロなどではこのような状況になりうる
NDフィルターを忘れた場合はHSSを使わざるを得ないが、ストロボと同時にNDフィルターも持ち歩く癖をつけることが望まれる。
色温度
ストロボ光にはストロボ光の色温度がある。一般的なクリップオンストロボは6000K±1000K程度の光源である。 結構ばらつきが大きいと感じるかもしれない。実際に並べて光らせると、色温度の違いを見て取れることもある。※ メーカー純正品であれば、同一世代のストロボ光の色温度の違いが問題になることはほとんどない。
※500K程度の差で違いが出てきて、1000Kも違うとまぜるな危険である
ストロボメーカー製の場合※は、製品ごとに色温度が異なることがあるため、多灯で使用する場合は同一型番のストロボを用いる、インターネット等で既知の情報を確認するなどしたほうがよい。
※GODOXやニッシンデジタルなど。GODOXはモノブロックとクリップオンで、ニッシンはクォーツ管とキセノン管で光源の特性が異なることが知られている
ストロボ光の特性を揃えても、定常光とストロボ光の色温度の差が問題になることがある。 このような場合は、ストロボ光に色温度変換フィルターを装着して対応する。
変換フィルターだけで完璧に対応するのは困難なので、どうにもならなければ最後は現像プロセスでマスクを切るなどして対応することになる。
演色性
演色性とは、ある光源下で物体の色が正しく評価できるかどうかを示す指標である。 これは光源がどの波長の光をどれくらい含んでいるかで決まる。 太陽光や白熱電球は連続的なスペクトルを持つ。 太陽光は大気による吸収を受けるが、可視光の波長域ではおおむね連続的な分布とみなしてよい。
人工光源の場合、白熱電球は連続的なスペクトルを持つ。 水銀灯やナトリウムランプは単色光で演色性が悪い。※ 蛍光灯やLEDも離散的な特性を持つ光源で、高演色を謳っていない製品はさほど演色性がよくないと考えてよい。 ストロボに使用されるキセノンランプは、連続的で演色性の高い光源だ。
※技術の進歩により高演色な光源も存在するが、基本的には
演色性が悪い光源とは、すなわち光に一部の波長が含まれていないような光源である。 イルミネーションや花火の撮影でもない限り、写真撮影では被写体の反射光を記録することになる。 被写体に当たる光に特定の波長がなければどうだろうか。 ナトリウムランプの下では、あらゆるものがオレンジ色に染まる。それはナトリウムランプがオレンジの光(589nm)しか含まないためである。 これでは色の評価などできない。 同様に、例えば光源に青の波長が含まれなければ、青いものは黒くなるだろう。
写真撮影の光源としてキセノンランプが用いられるのは、可視光域の波長を満遍なく含むためである。
暗所でスマートフォンを用いて写真撮影をする際に、色が悪いと感じたことはないだろうか。 暗所ではスマートフォンのLEDライトを点灯させることになるが、ここの演色性にまで配慮が行き届いているスマートフォンはそうないだろう。 少なくとも私は程度の差こそあれ、色がいいと感じたことはない。
演色性の評価には平均演色評価数(Ra)が用いられる。 一般照明としては、Ra90程度以上の光源が高演色と評される。台所の光源にはこうした光源を用いるとよいだろう。 写真撮影の光源としては、Ra95以上が望ましい。
光の成形
ライトシェーピングツールはライティングにおいて重要なツールである。 これはストロボを使用しなくても、覚えておくべきだ。※
※例えば屋内で太陽光を光源に撮影することを考えると、窓にレースカーテンを引くか引かないかで写真の印象が大きく変わることは想像に難くないだろう
通常、ライトシェーピングツールは光の硬軟を制御するために用いられる。
さて、ここでいうところの光の「硬さ」とは、光源がもたらす陰影のコントラストの強さである。 写真に通じている方ならお分かりだろうが、これは写真の硬調・軟調のそれである。 硬い光の下では硬調な写真となり、柔らかい光の下では軟調な写真となる。
※イメージからか一般に「柔らかい光」と評されるので、剛柔・硬軟の対応関係を破って、硬い光、柔らかい光という表現を使う
さて、ではどういった光源でははっきりした影が落ち、またどういった光源では影が消えるだろうか。 人類が最も親しんでる光源、太陽が答えを教えてくれる。 日中晴天下の太陽光は最も硬い光の一つだ。これは晴れた日中に表へ出て足元を見れば一目瞭然だ。 柔らかい光はどうだろうか。これも曇った日中に表に出て足元を見れば一目瞭然である。
晴れた日の太陽光と曇った日の太陽光では何が違うのだろうか。 空を見上げればわかる通り、曇天の時は、雲というとてつもなく巨大なシェードが光源たる太陽の間に挟まっている。 これが唯一にして決定的な違いである。
晴れた日には、太陽から放たれた光が大地に降り注いでいる。※ 曇った日には、太陽の光はいったん雲に入り、この雲を通した光が大地に降り注いでいる。
※実際には他に大気の散乱光があるが、直接光と比べれば僅かなので写真においてはこのように考えてよい
地上で空を見上げている人からすると、太陽は一つの点で、雲は見渡す限りの巨大な面だ。 これが第一の要素、被写体から見た発光面の大きさである。
太陽と雲にはもう一つ違いがある。 太陽から放たれた光はまっすぐに降り注ぐが、雲を通した光は雲から様々な方向に散らばっている。 これが第二の要素、指向性の強さだ。
被写体から見て、発光面が大きく指向性の弱い光は、被写体の後ろまでよく回り込むため、影が薄くなる。 逆に、発光面が小さく指向性の強い光は、被写体の後ろには回り込まず、濃い影を落とす。
柔らかい光を作りたければ、ソフトボックスやアンブレラ、レフ板を使って、被写体のそばに大きな発光面を生み出す。 逆に硬い光を作りたければ、スヌートやグリッド、ストロボ直射をすればよい。
発光面の大きい小さいとは、被写体から見たときの相対的な大きさだということに注意が必要だ。 アンブレラやソフトボックスを使っても、被写体から遠く離れた場所に置いては光が硬くなる。 これらのツールを離して使うのは、一定の大きさの硬い光を落としたいときだ(そのため、離すときは通常グリッドを併用する)。