10年前に発売を心待ちにして購入したものの、あまりに忙しすぎたこと、プレイ感が1と違いすぎたこと、断続的なプレイでは複雑なシステムの把握が難しかったこと、結果ビルドも怠りメインクエストのボスに勝てなくなったことで投げてしまった作品。 その後、ストーリーがクリフハンガーだったにもかかわらず一部で熱狂的なファンがいることを耳にし、ちゃんとやり込んだらどうだったんだろうとずっと気にはなっていた。
今回Switchで追加ストーリーを含めてリマスターされるということで、悩んだ末に買ってみることにした。メインクエストは追加ストーリーを含めてすべて完了、シンプルクエスト、ノーマルクエストもコンプリートし、ミラの調査率も100%にしたので、プレイした感想を 1. 良かったところ、2. 賛否が分かれるところ、3. 良くなかったところ の3つに分けてここに記録しておく。
シリーズプレイ歴
タイトル | 歴 |
---|---|
ゼノギアス | リアルタイムでプレイしてクリア |
ゼノサーガ | ゼノブレイドクリア後にプレイして1の途中で中止 |
ゼノブレイド | 全クエスト、コレペディア、ネームド討伐、キズナトーク等コンプリート |
ゼノブレイドクロス | WiiU版で7章くらいまでプレイして中止 |
ゼノブレイド2 | 全クエスト、全ブレイド育成、全ネームド討伐、キズナトーク等コンプリート チャレンジクエストは未プレイ |
黄金の国イーラ | 全クエスト、全ネームド討伐コンプリート |
ゼノブレイドDE | 未プレイ |
ゼノブレイド3 | 全クエスト、全ヒーロー・クラス育成、全ネームド討伐コンプリート |
新たなる未来 | 全クエスト、全ネームド討伐コンプリート |
雑感
細かな話に入る前に簡単にまとめてしまうと、ストーリーテリングとレベルデザインに粗は多いが、探索・ビルド・戦闘のやり込み要素は面白い、相当に歪で荒削りな大作奇ゲーという印象。終盤まで色々とストレスは多いものの、やり込みに入ってからはすべてのシステムが噛み合って急に面白くなる。
到底万人におすすめできるゲームではないが、いまいちな要素を許容・突破できそうで、やり込み要素を楽しめそうな人になら是非やってみてほしい、そんな扱いの難しいゲーム。
良かったところ
奥深いビルドと育成
このゲームでのビルド・育成には、人間大のプレイアブルキャラクター(インナー)と巨大ロボット(ドール)の2つがあり、それぞれで大きく異なっている。そのどちらも幅は相当に広く、多様で奥深い仕組みが用意されている。
ドロップ狙いの狩りも楽しめる多様な装備の収集
装備はインナーとドールで完全に別物になっており、それぞれ10~15箇所の装備枠があって、装備品ごとに固有のボーナス効果(アフィックス)がつく上、スロットに付加効果(デバイス)をつけたりもできるので、その組み合わせは途方もない数字になる。
ゼノブレイドシリーズの伝統だが、装備につけられる付加効果は限定条件下でダメージを50~100%増強するようなものがざらにあり、そうした効果を合計で数十か所に設定できるため、ビルド次第でとんでもない差を生み出すことができる。場合によってはこうした効果を狙って揃えないと全く相手にならないようなボスもいるので、強敵に挑むならどこかで腰を据えて集めていくことになるだろう。
装備はショップでの購入だけでなく、設計図を元に素材から開発、フィールドに落ちているトレジャーからの取得、モンスターによるドロップ、クエスト報酬など入手方法も様々で、特に高レベルのモンスターが落とすドロップ品はレアリティによって強力な効果が複数ついたりするので、高レベルモンスターやオーバードと呼ばれるボス討伐の動機づけになっている。
組み合わせて多様な戦闘スタイルを生み出せるクラス・アーツ・スキル
装備の組み合わせだけでも途方もないが、本作はインナーに対して6系統計16のクラスが用意されており、クラスごとに特定のステータスが強化されるほか、パッシブ効果を持つスキルを覚えられ、一度覚えたスキルは他のクラスでも自由に使うことができる。
また、クラス系統ごとに装備できる武器種が決められており、武器種が決まると使えるアーツ(いわゆるアクティブスキル、10程度ずつ用意される)の種類も連動して決まるようになっている。系統の最上位クラスをマスターすることで他のクラスでもその武器種を使えるようになり、あわせてアーツも他のクラスで使えるようになる。こうして、クラス・武器種・アーツ・スキルを自由に組み合わせて固有の戦闘スタイルを作り出すことができるわけだ。
これに対してさらに途方もない組み合わせの装備が重なるわけなので、ビルドの奥深さがなんとなく想像できるのではないかと思う。
異常なカスタマイズ性を持つドール
インナーのビルドも十分に奥深いが、ドールはドールでインナーとは別方向である種もっと幅広いビルドができるようになっている。
ドールを操る際はインナー形態の人が搭乗するのだが、搭乗するインナーのクラスやアーツがドールの戦闘力に影響を与えることはほとんどない(非常に限られた一部のスキルだけが影響する)。そういう意味で、クラス・アーツ面でインナーのようなビルドの幅はない。 かわりに、インナーの防具としてドールの性能を強化するドールスーツという種類が用意されており、ここにドール強化のアフィックスやデバイスをつけられるようになっている。
ドールはそもそもドール自身の装備に対し、インナーをはるかに超えるアフィックス・デバイスの枠(最大83個所)が用意されているのだが、これに加えてインナースーツのアフィックス・デバイス枠(20箇所)も考慮するとなると、装備自体の選択に加え、103個所のボーナス効果を選び、組み合わせることになる。
インナーのクラス・アーツ・スキルは戦闘していれば勝手に覚えていくが、ドールの場合はどんな効果をつけるかを考えて、それを入手するところから自分で取りかからないといけない。しかも103個所…とんでもなく大変だが手間をかけるほど天井知らずに強くなっていく、それがドールの魅力だ。
適度に複雑で爽快感のあるバトル
本作の戦闘の基本はナンバリングシリーズと同じくリアルタイムコマンドバトルであり、オートアタックで攻撃しつつアーツのゲージを溜めて、位置取りやコンボを考慮しつつタイミング良くアーツを撃ち込んでいくというもの。その土台に加えて、オーバークロックギア(OCG)という超加速超強化攻撃システムと、ソウルボイス・ソウルステージという仲間との連携システムがある。
インナー戦闘とドール戦闘ではOCG等のシステムの働きが少し異なるほか、アーツや装備の特性が異なることもあり、結果としてそれぞれで戦闘の様相は大きく異なるのだが、どちらも独自の面白さを作り出せている。戦闘の面白さはシリーズを通して一番かもしれない。
OCGで爽快感抜群のインナー戦闘
インナー戦闘では、基本システムに加えてダブルリキャスト、クイックリキャストという仕組みが用意される。また、OCGはリキャストを超加速し、高速でアーツを放ってコンボを作り出し、超ダメージで敵を葬り去るものになっている。ゼノブレイドの戦闘はリキャストの関係上比較的スローなものが多いが、本作ではOCGによってアクションゲームさながらのプレイ感となっており、超ダメージもあいまってとんでもない爽快感が得られる。
ここで、固有システムのうちソウルボイス、OCG、クイックリキャストについて簡単に触れておく。
ソウルボイスは、状況に応じて一定確率でキャラクターがパーティーに対して、例えば「接近戦をしかけろ!」「今だ、射撃で転倒させて!」「回復アーツをお願い!」などの声をかけるシステムで、これに対して有効時間内に依頼どおりの行動を取ることでHPが回復したりバフがかかったりする。また、ソウルチャレンジというゼノブレイド1の突発キズナの発展型のような仕組みもあり、チャレンジサークルへのアクションに成功するとソウルステージというゲージが最大3段階まで上昇し、上昇するごとにソウルボイスが発生しやすくなったり、バフがかかったり、アーツに追加効果が発生したりする。
シリーズの伝統を受け継いで回復アーツが弱く、序盤は地味にHPを削り合う戦いが続くため、ソウルボイスに応えることはかなり重要になっている。
OCGは、ナンバリングでいうところのチェインアタックに近いもので、TPという特殊アーツを使うためのポイントを大量に消費して発動する特殊な戦闘モードだ。発動すると、初期値で15秒間アーツのリキャストと威力が強化され、同時にアーツを打つたびにギアカウントという数字がカウントアップを始める。このギアカウントが進めば進むほどアーツのリキャストが短くなり、アーツのダメージも上がっていく。普通に使っているとすぐに終わってしまい大したダメージにもならないが、OCG用にビルドすることで効果時間を延長することができ、カウントが60を超えたあたりから残り時間はほぼ無限になる。カウントがMAXに達するとリキャスト速度が5倍、アーツの威力が6倍になり、途切れなくダブル・トリプルリキャストのアーツを撃ち続けた結果、敵は瞬く間に消滅する。
OCG中は残り時間、ギアカウント、自分のHP・TP、自分にかかったバフの状況、アーツのリキャスト状況、敵へのターゲット状況、敵の攻撃状況、コンボ選択肢といった大量の情報を確認しながら、カウントが進むにつれて自身の操作速度も早めていき、操作がうまく成功すればほとんど無敵状態になって単独で見たことがないようなダメージを叩き出し、遥かに格上の敵をも一瞬で葬り去るため、音ゲーやアクションゲーさながらの陶酔感・爽快感が得られて非常に楽しいものだ。
クイックリキャストは、探索を進めることで得られるエネルギーパックというアイテムの保有数に応じてアーツのリキャスト時間を補充し、瞬時に発動できるシステムで、WiiU版の戦闘システムの不満を一気に解消する素晴らしい追加システムだ。
本作の序盤はソウルボイスにきちんと応えていくことが戦闘の安定につながるが、ソウルボイスはいつ発生するかわからず、確実に応えるためにはリキャスト済みのアーツを使わずに取っておく必要がある。しかし、運悪く対応するソウルボイスがいつまでも来ない場合、そのアーツはずっと使われないままになり、戦闘効率が落ちてしまう。WiiU版では常にこのトレードオフに悩まされ、使った後でソウルボイスが来ると悔しい気持ちで見送ることになり、ストレスが溜まっていた。クイックリキャストはこれをスマートに解決している。
クイックリキャストはまた、OCGの使いづらさも同時に解決している。OCGはギアカウントを十分に上げきればストレスなく強さを発揮できるが、カウントが低いうちはリキャストがそこまで速くないため、時間延長のためのアーツを十分に発動しきれないことが多かった。ここで、カウントが低い間はエネルギーパックを使ってアーツを連発することでギアカウントの上昇ペースを底上げし、リキャストや時間延長効果を高めて十分なカウントまで持っていくことでスムーズに強い状態まで持っていくことが可能になった。
大味だがビルドでどこまでも伸びるドール戦闘
インナー戦闘では操作性が重要で、それが独自の楽しさにもつながっていたが、ドール戦はインナーとは対照的にビルドに振り切った形になっている。ドールの戦闘にもOCGやソウルボイス・ソウルステージはあり、コックピットモードという特殊なシステムも追加されてはいるのだが、いずれも操作性を要求するものではなく、発動するとステータスや燃料消費にボーナスがついたり、リキャスト回復するなど比較的単純でわかりやすいものばかりだ。アーツのリキャスト時間も長いものが多く、クイックリキャストも基本的には存在しないため、戦闘はかなりのスローペースになる。
反面、ドールはビルドによってとんでもない強化を施すことが可能で、さらに超兵器と呼ばれる超威力(そして超リキャストタイム)の武器を開発できるので、超兵器に合わせてビルドを整えた上で開幕に打ち込むことで、インナーではOCGをカウントMAXにしてようやく倒しきれるような超巨大ボスをたった一撃で葬り去ることができる。綿密なビルドに裏付けられた超火力の一撃がもたらすロマン、それがドール戦闘の醍醐味だ。
あまりに多様なボス戦・オーバード狩り
舞台である惑星ミラには250体を超えるオーバードと呼ばれる特殊ボス(ナンバリングで言うネームド)が生息しており、高レベルのオーバードの中には全属性を反射して開戦直後に問答無用でこちらを即死させてくる者、戦った瞬間即死レベルの継続ダメージを与えてくる者、毎秒8万のHPを回復して永久に死なない者…と、とんでもない性能を持つ敵がゴロゴロしている。これらはもはや個別に対策を練る必要があり、そのために各地でドロップを収集して武器を揃えたりデバイスを開発したりすることになり、ビルドの沼にはまっていくことになる。
コンプリート要素・図鑑要素
このゲームは地図が六角形のセグメントで分割されており、セグメントごとに達成すべき目標が設定され、大陸ごと、そして惑星全体でその達成率を積み上げていくゲームデザインになっている。目標にはトレジャーの発見、オーバードの討伐、クエストの達成など様々あり、ゲーム全体がコンプリート要素のような作りになっているのはその手の人間にはたまらないだろう。
また、後のナンバリングシリーズでは失われてしまうが、各大陸のコレクションアイテムを登録して完成させていくコレペディアやモンスター図鑑、NPC同士の関係を記録するキズナグラムが存在しており、コレクター心をくすぐってくる。モンスター図鑑では細かな説明文に加えて耐性の情報やドロップアイテムも掲載されており、対策や収集にも有用だ。
澤野弘之による音楽
光田康典、ACE+といったおなじみの面子が手掛けるナンバリングとは異なり、あの澤野弘之が手掛けている。この結果、音楽のテイストはナンバリングとは全く異なるのだが、これはこれで非常に素晴らしいものに仕上がっている。序盤は違和感が強かったが、要所で流れるメロディアスな音楽、そして戦闘で流れる各種音楽は非常に素晴らしく、総合的には初代に引けを取らないと感じる。特にオーバード戦闘で流れるUncontrollableは名を冠する者たちに比肩し、OCGで流れるWir fliegenとのループはゲームプレイを想起させて聴くだけでアドレナリンが出てくる。
賛否が分かれるところ
サブクエスト主体のストーリーテリング
このゲームはメインストーリーがかなり薄味で、NLAの住人たちに関する膨大なサブクエストで少しずつこの世界とその関係について語っていく形式を取っている。これはナンバリングシリーズと同じではあるのだが、主なロケーションがNLAの一箇所しかなく同じような住民との交流が続くことから、深堀りできる利点とマンネリ化しやすい欠点が混在している。
最初は知らない人からのおつかいばかりで正直つらいのだが、進めていくにつれて以前のクエストで知り合ったNPCが何度も登場し、連続クエストとして話がつながっていくものが多く、少しずつ面白さが積み上がっていく。終盤まで続けられれば全体として悪くはない一方で、メインとあわせて序盤で退屈になりやすいのは大きな課題と思う。
惑星ミラのフィールド・探索
ミラという惑星をまるごと1つ作り上げた巨大なフィールドは大きな魅力で、ゼノシリーズ特有の絶景にビルより大きな原生生物が闊歩し、冒険心を刺激されるものに仕上がっている。
ただこのフィールド、とりあえずコンセプトアートどおりに映える星を作ってみましたという雰囲気で、近年のオープンワールドゼルダのように地形で動きを誘導してレベルデザインと一体化するような形にはなっていない。フィールドを歩いているとビジュアル的には申し分なく感じるのだが、行きたい場所が見えやすいわけではなく、高いところに登ろうにも引っかかる場所を探して延々ジャンプする羽目になり、じわじわとストレスがたまる。そして頑張って上まで登ったところで特に良いことがあるわけでもなく、壁登りとパラセールは大きなイノベーションだったんだなと思わされる。
この規模のフィールドがWiiU時代にドール飛行も含めてシームレスに探索できたことが素晴らしいのは間違いないのだが、その体験としては今となっては相応のストレスを感じるものでもある。そうした粗削りでデザインされていない探索体験が好きな人もいるだろうし、ゼルダのようなウェルメイドな探索が好きな人もおり、このあたりは賛否分かれるのではないだろうか。
感情移入しづらいキャラクター
キャラクターには大別して、仲間キャラクター、NLA住民、敵対勢力の3種類いるが、どれもこれも癖が強かったり問題があったりして手放しで評価しにくい。
仲間キャラクターは良くも悪くもテンプレから外れており、第一印象が悪かったりわかりづらかったりするキャラが多い。メインクエストで描かれるのはエルマとラオぐらいで、他のキャラクターは大した描写もないまま唐突に加入してメインにも出てこないため、序盤は特に親近感が湧きにくい。キズナクエストを重ねていくことである程度事情がわかって好きになったりはするのだが、これだけではどうしても描写が不足気味で、記憶に残りにくいキャラもいる。
敵対勢力に至ってはメインが薄すぎることも手伝って印象に残ることはほとんどなく、次々に現れては消えていく印象しかない。もう少し魅力のある敵が出てくると良かったのだが、最後の最後までそうした敵は出てこなかった(このへんもゼノブレイド3に似ている)。
NLA住民は、サブクエストを重ねていくことで面白みが出てくるのだが、端的に言って胸糞悪いNPCも多く、愛着のある仲間というよりは「世の中には色んな人がいるもんだね」みたいな一歩引いた感想になってしまっている。まぁこれはこれで面白いのだが…
淡白さが目立つムービー・演出
棒立ちでセリフだけが流れるカットシーンの印象がとにかく強いが、メインクエストで時折挿入されるプリレンダのカットシーンの品質は結構高い。問題は、メインが薄いためこうしたシーンが非常に少なく、サブクエストを含む大半のシーンがやはり棒立ちでセリフだけのシーンが占めていること。ただ、追加された13章は質も量もやたらと気合が入っている。ここだけナンバリングシリーズの最新作のようだった。
改善されてはいるが課題は残るUI・その他システム
HUDや各種メニューはかなり改善されて見やすくはなっている。文字も大きくなり、見えづらいということは少ない。ただ、やはり装備・アイテムまわりは種類が膨大すぎてうまく扱いきれておらず、プレイヤーとしてもストレスはそれなりに残っている。用途ごとに装備セットを登録・呼び出しできるようになれば随分違ったと思われる。
メンバーチェンジや時間変更がいつでも出来るようになったのは大きな進歩ではあるが、元がおかしかっただけという気はする。
矛盾を孕む追加ストーリー
ネタバレなしなので具体的な記述は避けるが、今回追加されたストーリーはおそらく当時想定していた設定や展開とはかなり異なるように思う。その根拠は、WiiU時代から存在していた本編での台詞や設定と明らかに矛盾した展開や台詞が散見されること。
勝手な想像ではあるが、このゲームは10年前に不足した部分を補足したというより、10年前のゲームを利用してIPや設定を先につなげるために改変したもののように見えている。これは、ゼノブレイドDEの追加ストーリーである繋がる未来を、3のプロローグのように仕立てたことと似ている。
10年前の「This story is never ending…」のまま終わるより何倍も良いのは間違いないが、本当にこれで良かったのか、元々どうしようとしていたのか、色々と疑問があるのは確かだ。
よくなかったところ
起伏に乏しく結末に納得感の薄い(追加除く)メインストーリー
これは10年前から言われていたことで、今回も変わらず薄味、大した起伏もなく終盤まで進んでいく。この話はエンディング直前までほとんど何もわからず進行し、エンディングの中で色々と明かされはするものの、その後さらなる特大の謎を残して終わっていった。もちろん今回は追加ストーリーで謎に対して一通りの説明はついたのだが、先程述べたとおり本来想定していた展開なのかは疑問が残る。
主人公が喋らないのはまだいいとしても、選択肢を表示させた上でいちいち音楽が停止するのはどうにかしてほしかった…。
練り込みの不足したレベルデザイン
ストーリーに一定の補完がされた今、このゲームの一番の課題はここだと思われる。根本的にこのゲームは、自由になんでもできるように見えて、実際はインナーLvによって出来ることが強く制限されたゲームとなっている。その割に、ゲームシステムはLv制限をすべて突破したLv60以降を主眼に作られているように見え、レベルデザインやゲームループの設計に失敗しているように見える。
終盤まで機能しないビルド系システム
このゲームには自キャラ強化向けに膨大なシステム群が用意されているが、メインをクリアするくらいまでは実質的にほとんど機能していない。難しすぎるというのもあるが、多少触れてみたところで使い勝手が悪すぎて効果的に使うことが難しい。装備開発は必要な設計書が全く集まらず、ぽつぽつ増えたところで素材が集まらないためほとんど使えない。アフィックス強化やデバイス作成は、ベース装備の移り変わりが激しすぎるため投資対効果が低く、ショップ装備を買った方が簡単に強くなれる。スロット追加もベース装備が安定しないなら貴重なミラニウムの無駄にしかならない。
そして、ビルドがまともに機能しないということはOCGを使いこなすのも難しく、終盤まではあの爽快感になかなか触れられないということになる。ドールもビルドしなければ大して強くはなく、このゲーム最大の長所であるビルドの奥深さと戦闘の爽快感をなかなか味わえないのは非常にもったいない。
事故死を誘発する雑な敵の配置
フィールドがゲームプレイの導線として設計されていないという話と関連するが、10~20Lv程度の雑魚とLv70を超えるオーバードが混在するように配置されたフィールドが数多く存在し、クリア後のやり込みに入ってレベルが60~になるまではフィールドのあちこちで予想外の強敵に絡まれドールを破壊されたり死んだりといった事故が多発する。これはこれで偶発的で面白いと感じる人もいるかもしれないが…中盤以降は移動にドールを使うことが多く、この状態で不意打ちされてドールを破壊されるとペナルティが大きいため、唐突に死ぬという体験はストレスにつながることが多い。
メインの進行を阻害する推奨レベル詐欺クエスト
このゲームには推奨レベル詐欺のクエストがそれなりの数で存在する。例えば、討伐対象のLvが30なのに、対象までの道中や周囲にLv50とか60の敵が非常に避けにくい形で配置され、何度やっても突然乱入されて殺されたり、Lvは相応でも戦い始めた瞬間に膨大な数の敵を呼び寄せて袋叩きにされたり、序盤で唐突に終盤まで行かないような大陸まではるばる旅をさせられたり…
ノーマルクエストであればただ腹が立ったりイライラするだけで済むが、これがキズナクエストの場合は最悪で、クリアするまで他のキズナクエストはおろかメインクエストも受注できない。そして、一度受けたキズナクエストはキャンセルできないため、レベル詐欺を乗り越えるまでメインを進めることもできなくなってしまう。
まとめ
良い点
- 奥深いビルドと育成
- 適度に複雑で爽快感のあるバトル
- あまりに多様なボス戦・オーバード狩り
- コンプリート要素・図鑑要素
- 澤野弘之による音楽
賛否分かれる点
- サブクエスト主体のストーリーテリング
- 惑星ミラのフィールド・探索
- 感情移入しづらいキャラクター
- 淡白さが目立つムービー・演出
- 改善されてはいるが課題は残るUI・その他システム
- 矛盾を孕む追加ストーリー
良くない点
- 起伏に乏しく結末に納得感の薄い(追加除く)メインストーリー
- 練り込みの不足したレベルデザイン