この記事の要点
モータースポーツ撮影において
- 俺はカメラに命かけてねぇ!
- 程々に撮れりゃいいと思ってる。
- 軽量コンパクトで安価に望遠やりたい
- 砂ぼこり、大雨、大雪でもガンガン撮りたい
- 比較的安価にハイエンド機の機能を楽しみたい
- 多少のデメリットは技術と工夫でカバーだ!
……などと思ってる方はぜひマイクロフォーサーズへ!
こんにちは。DaShimodyです。
本日は今所有するカメラ「OM SYSTEM OM-1」やマイクロフォーサーズの良さを長々と語りたいなと思います。
■ まずはカメラ遍歴から ■
僕はモータースポーツ観戦が趣味で、現地では無心でカメラを振り回している、いわゆる“カメラおじさん”のひとりです。 観戦歴はかれこれ10年以上。F1やWEC、全日本ラリー、モトジムカーナ、オフロードレースなど、ジャンル問わず幅広く現地に足を運んできました。
実は一眼レフ歴のほうがさらに長くて、モータースポーツ観戦より前から、鉄道写真なんかも撮っていました。もう15年選手です。
ざっくりと、これまで使ってきた一眼レフの遍歴をご紹介するとこんな感じです!
①Nikon D3100 (2011~2014年)
人生初の一眼レフ。一眼レフカメラのいろはを教えてもらったカメラで、これで随分と電車を撮ったりしました。 けど、自分の中ではそんな印象には残ってないんだよなぁ…。
軽くてコンパクトなカメラではあったので、一周回って今ならライトに楽しめて面白いカメラなのかしら?と思ったりはします。
②Nikon D7100 (2014~2021年)
一番長く使用したカメラ。連写時のバッファー切れが若干気になりつつも、電車もレースも飛行機も風景もそつなく写してくれる、素晴らしいカメラでした。
2018年の鈴鹿10時間レースで大雨に見舞われ、カメラモニターが綱かくなったのですが、それでも上面表示パネルの表示だけ便りに3年ぐらい無理して使ってました。単純にお金がなかった…。
今一眼レフを買うならPENTAX機か、D7100を買い戻すか…ってぐらいに思い出に残ったカメラです。
③Nikon Z50 (2021~2024年)
モニターが点かないD7100をさすがに買い替えようと思い立った2021年。当時はミラーレス機がだんだん普及しつつもあったので、Nikonの販売員の勧めもあり、思い切ってZ50ダブルズームキットを購入。
D7100から乗り換えて撮ってみた写りは一級品。青空の抜けるような色味や、びっくりするほどの解像感に感動した覚えがあります。キットレンズの写りやAF性能も素晴らしく、非常にいいカメラでしたが、後述する理由でOM-1に買い替えることに。
でもZ50は名機だと思っていて、今でも「カメラ買いたいんだよね」って人にZ50勧めて回ってます。風景撮るもよし、レースで連写するもよし。オールマイティながらにそれぞれの領域でいい働きをしてくれるカメラでした。
④OM SYSTEM OM-1 (2024年~現在)
そしてこれからお話しするOM-1。OM SYSTEMがラインナップするミラーレス一眼のフラッグシップ機です。 Z50比較で、単にフラッグシップ機になっただけでなく、機械学習技術を駆使した撮影支援機能が充実し始めた世代の機種なだけあり、モータースポーツ撮影がめっちゃ楽になりました。 まぁ詳しいことは後程…
■ Nikon Z50を使ってた時のお話 ■
前述の通り、Z50は本当に良いカメラです。 ダブルズームキットを買っておけば、風景からレース撮影まで、幅広いジャンルで美しい写真が楽しめるはずです。
広角ズームを装着すれば、非常に軽量・コンパクトなスナップ用カメラとして街撮りでも活躍してくれます。
望遠ズームに切り替えれば、その解像感とAF性能を武器に、レース現場での流し撮りでも十分に戦える実力があります。 …とはいえ、APS-Cで焦点距離50-250mmというのは、国際規模のレーシングコースでは少し物足りなく感じることも多いです。
それでも、レンズの解像感やAFの精度が良好なおかげで、「無理してサードパーティの安価な超望遠を買うくらいなら、これで粘ろう」と思わせてくれる力があります。
実際僕も、SIGMAの「APO 50-500mm F4.5-6.3 DG OS HSM」と「100-400mm F5-6.3 DG OS HSM Contemporary」を所有し、それぞれマウントアダプターを介してZ50に装着して使っていました。 しかし、どうしても色にじみやAFの甘さが気になってしまい、途中からはむしろキットズームで粘る方が安定していました。
実際、僕はSIGMAのAPO 50-500mm F4.5-6.3 DG OS HSMと、100-400mm F5-6.3 DG OS HSM Contemporaryを所有し、それぞれマウントアダプターでZマウントのZ50に装着していたのですが、色にじみやAFの甘さがどうしても気になってしまい、途中からはキットズームで頑張ってたぐらいです。
なので、Z50でレースをきれいに撮ろうとするなら、基本的に以下の二択になります:
・キットズームの50-250mmで粘るか
・解像感に優れたZマウント対応の超望遠レンズを導入するか
……ところが、ここで問題になるのがZマウントレンズの価格の高さ。
そして、(これは2022〜23年当時の話ですが)サードパーティ製の対応レンズも非常に限られており、手頃な選択肢がほとんどありません。
さらに、多くのレンズがフルサイズ向けに作られていることもあって、サイズも重量もかさみがちです。例えば、Nikon Z50にFTZアダプターをかませて、SIGMAの「APO 50-500mm F4.5-6.3 DG OS HSM」を装着すると、トータル重量は2.5kg超えになります。
これは完全に僕のポリシーですが、一脚や三脚は「邪魔だし、面倒くさい」と思っているので、撮影は完全手持ち派でした。なので、2.5kg超えの装備を一日中振り回すと、翌日は必ず手首が痛くなってました。
そういう事情もあり、無理して新しいレンズを買うよりは、キットズーム中心の運用に落ち着いていました。 どうしても超望遠が欲しいときだけ、シグマの50-500mmや100-400mmを持ち出す、というスタイルでした。
とはいえ、これくらいは運用の工夫で乗り切れる範囲でしたので、当時はまだ買い替えようなどとは思っていませんでした。
Z50に広角キットズームを付けるとこのサイズ感!
Z50 + NIKKOR Z DX 50-250mm f/4.5-6.3 VR。250mm(フルサイズ換算:375mm)でも、場所やアングル次第で迫力ある写真が撮れる。
Z50 + FTZ + APO 50-500mm F4.5-6.3 DG OS HSMで撮影。AFがもたついてしまい、頑張ってもこんな感じの写りなので要領よく撮る必要があった。
Z50 + FTZ + APO 50-500mm F4.5-6.3 DG OS HSM。トータル2.5kg越えを手持ちで撮るのでクソ重たい。
■ Z50を買い替えるきっかけになった出来事 ■
オフロードレースで目の当たりにした防塵性能の限界
2024年の5月、僕は青森県のオフロードレース観戦に行きました。
ジャパンオフロードレースと呼ばれる、青森県と岩手県で行われる、めちゃくちゃローカルなオフロードレースシリーズです。参戦マシンの顔ぶれもユニークで、ジムニーやインプレッサのような市販車から、北米オフロードレース界からそのまま持ってきたようなデューンバギーまで駆け抜けるレースです。
二輪も四輪も、オフロードレース観戦は初でしたが、とりあえずいつもの如くZ50にキットズーム50-250mmを持ち出しました。
Z50 + NIKKOR Z DX 50-250mm f/4.5-6.3 VRで撮影したオフロードレース。メカメカしい後ろ姿や、ボリューミーな砂埃がカッコいい!
そして、いつも通りレースの様子を撮っていたのですが……
お昼ごろだったでしょうか。 朝には見られなかったセンサーゴミが、画像のあちこちに映り込んでいるのに気づきました。 マシンが巻き上げた砂ぼこりが、Z50やレンズの隙間から入り込み、イメージセンサーに付着したのでしょう。 実際このレース、コース沿いで観戦しているだけでも服が砂っぽくなるくらいなんですよね。
そして15時、レースが終わる頃には、さらにゴミが増えてしまい、帰宅後のレタッチ処理が大惨事に。 まるで“間違い探し”のように、一枚一枚ゴミを消す作業が待っていました。
思えば、ミラーレスのZ50に切り替えてからというもの、こんな不満を感じていました:
・レンズ交換時にセンサーがむき出しなので、簡単にゴミが付着する
・その除去に定期的なメンテナンス費用がかかる (2~3か月に1回程度)
・画像に映り込んだゴミを一枚ずつレタッチで消す羽目になる
地味だけど、ずっと大きな不満でした。
「おいおいNikonさんよぉ……ローエンド機とはいえ、もうちょっと気を使ってくれてもいいんじゃないか?」と、半ば呆れながら思っていたものです。
(D7100含めて一眼レフ時代はミラーがセンサーをガードしていたので、センサーごみが付きにくかった)
とはいえ、「撮影中にも明らかにゴミが増えていく」なんて事態は今回が初めてで、レタッチしながら軽くドン引きしている自分がいましたw
まぁそんなわけで、積もり積もった不満が、砂ぼこりのメッカであるオフロードレースという舞台で一気に高まったわけです。 しかも、オフロードレースの魅力に気づいた以上、次回以降も撮りに行く機会は絶対ある。
そう考えた末、たどり着いた結論が―― 防塵性能に優れたカメラに買い替えることでした。
(ちなみに調べてみたら、Z50は「防塵・防滴に“配慮した”設計」らしく……。「その“配慮”って表現、なんか自信なさげじゃない?」とか「……本当に配慮してんのか?これ?」とツッコミたくなりました)
■ マイクロフォーサーズとの出会い~OM-1購入へ ■
実は自分、センサーサイズに大きなこだわりもなく、大きさとか写りとか価格を機にしてたらAPS-Cに落ち着いて今まで来たタイプでした。なのでマイクロフォーサーズという規格自体は知ってても、そんなに関心を寄せてこなかったんですよね。
そんな僕が、マイクロフォーサーズに一気に興味を持ち始めたきっかけは、大学時代の後輩が“ガチのマイクロフォーサーズ信者”だったこと。
彼は OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II や LUMIX DMC-GX7 を愛用していて、研究室で会うたびに「安くてコンパクトは正義!」「レンズ選び楽しいぞ!」などと、"マイクロフォーサーズはいいぞ”という怪電波をこちらに送り続けてきました。
そしてちょうどその頃、例のセンサーゴミ問題で次のカメラを検討していたこともあり、「ちょっと本気でマイクロフォーサーズ調べてみるか……」と腰を上げることになったのでした。
と言う事でマイクロフォーサーズのメリット・デメリットを個人的に纏めると…
マイクロフォーサーズ機が有利な点
・軽量コンパクトなボディ&レンズ群
・換算2倍の焦点距離
・防塵防滴性能 (OM機が強いがLUMIXも結構拘っているらしい)
・豊富かつ安価なレンズラインナップ
・こなれた中古価格
・他人があまり使わない機材で撮る面白さ(?)
特にOM SYSTEM(OLYMPUS)機における防塵防滴性能は目を見張るものがあります。
・これでもかといわんばかりに随所に施されたシーリングでゴミや水滴の進入をガード
・スーパーソニックウェーブフィルター(SSWF)で確実にセンサーごみを除去
特に後者のダストリダクションシステムは魅力的です。ゴミが入るのは最悪しょうがないとして、屋外で動き回ってるときでもゴミを取れる仕組みが欲しいよね…と思っていましたし。他社製カメラにも類似機構はありますが、このあたりに特許はOLYMPUSがガッチガチに固めてるらしく、この辺の性能はOLYMPUS一強だそうですね。やっぱり知財って大事なんだなぁ~(何の話だ)
また、焦点距離2倍という仕様も、シンプルながら非常に強力です。廉価かつコンパクトなレンズで超望遠の画角が手に入るわけで、レース撮影においてこれは明確なアドバンテージになります。
そして、OLYMPUSとLUMIXの両ブランドからマイクロフォーサーズ専用レンズが数多くリリースされているのも魅力のひとつです。こなれた中古価格というのもカジュアルにカメラを楽しむうえでは無視できないポイントです。不人気ゆえに値崩れしやすいという側面は、むしろ多彩なレンズを楽しめるチャンスとも言えます。
マイクロフォーサーズ機が不利な点
・高感度耐性が弱く、夜間や暗所撮影ではノイズとの戦いになりがち。
・被写界深度が深く、背景をボカしにくい。
・センサーサイズが小さいので画質も若干低下する傾向。
・規格としての将来性に対して、頭打ち感がある。
この中で一番気がかりなのは高感度耐性ではあります。富士24時間レースやWRCのナイトステージなど、夜間撮影の機会はそこそこあるためです。とはいえ、シャッタースピード頑張って下げて流し撮りすればいけない事もないかな?と言う事で納得。
被写界深度と画質の問題はそこまで気になりませんでした。写真に命かけてるわけでもなく、「そこそこ写りゃええねん」程度に思ってるので…。
最後のマイクロフォーサーズの寸詰まり感。OLYMPUSからバージされたOM SYSTEMの開発体力に懸念がありますし、LUMIXも最近はマイクロフォーサーズ興味なさげな雰囲気です。とはいえ、最新機やレンズを追いかける楽しみ方をしてるわけでもないので、それは心配しても意味ないかなぁと思った次第です。
購入候補
マイクロフォーサーズの中でさらに機材を選んでいった結果、候補は以下に絞られました。
・OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II
・LUMIX DC-G9 (G9 Pro)
・OM SYSTEM OM-1
中古価格で15万以内のボディで、レース撮影向き…と調べた結果です。
当初は後輩と同じようにE-M1 Mark IIか、G9 Proでいいかな、と思っていたのですが、中古カメラ屋さんにレースで使いたい旨を話したら、「そこはもうちょい奮発してOM-1でいこうや」と言われたんですよね。
E-M1 Mark IIに対しては
・フラッグシップ機ならではの連写性能とAF性能
・裏面照射型センサーで暗所撮影性能が改善している
G9 Proに対しては
・軽量コンパクト
・AFの食いつきや速度は一枚上手
・モータースポーツ認識AFがめっちゃ有用
……というOM-1の優位性を熱く語られまして、あっという間に本命はOM-1に。
特に、モータースポーツ認識AFにはめちゃくちゃ期待していて、 「これで写真がもっときれいに撮れるんなら……数万円の差なんて誤差じゃない……?」 という、よくある金銭感覚のバグが発動。 そのまま──
2024年8月に購入!!
同時に選んだレンズは、OM SYSTEMが誇る「M.ZUIKO DIGITAL ED 12-200mm F3.5-6.3」。換算24-400mmという驚異の守備範囲で、街撮りスナップからレース撮影まで全部こなせる万能型。人を駄目にするレンズの呼び名は伊達じゃない!
しかも、ハイエンドレンズシリーズ「M.ZUIKO PRO」と同等の防塵防滴性能を備えており、「これ1本でオフロードレース撮影は優勝や……!」とルンルンでした。
ちなみに当時はZ50が品薄だったこともあり、キットレンズ2本込みでZ50を高値で下取りしてもらうことに成功。 そのおかげで、OM-1本体と12-200mmレンズを揃えても、差額の支払いはたったの7万円ほどで済みました。
冷静に考えてみてください。
・ローエンド機だったZ50から、フラッグシップのOM-1へステップアップ
・さらに、以前のキットズームとほぼ同等の焦点距離をカバーする超便利ズーム付き
そして支払い差額は約7万円
……お買い得じゃないですか!?ね!?ねぇ!?(金銭感覚、完全にバグりました)
OM-1 + M.ZUIKO DIGITAL ED 12-200mm F3.5-6.3で撮影。これはワイド端(12mm)。東京国際クルーズターミナルにて。
望遠端(200mm)まで寄った場合。5km先の羽田空港に着陸する機体もちゃんと写る。
■ OM-1実戦デビュー ■
ということで念願のOM-1を手にしたので早速レース撮影に投入しました!
◇ジャパンオフロードレース最終戦 (2024年11月)
砂ぼこり舞う中でも快適に撮影できるように!
このレースは砂埃が結構舞うため、カメラの防塵性能がものを言います。 前回、Z50で臨んだときは完敗でしたが、OM-1と12-200mmの防塵防滴ガチ勢の組み合わせは、その性能をいかんなく発揮。
さらに、装着レンズのおかげで、コース上を走るマシンを望遠で収めた後、パドックでそのマシンを広角で撮影する…というケースにも1本で対応できます。そのため、センサーごみ付着のリスクが上がるレンズ交換を一切しなくてもよいというのは大変安心でした。
おかげで、センサーごみが写り込む様子が1度もないまま、無事に楽しく撮影を終えられました。OM-1に買い替えた直接的なきっかけになったレースでもあったので、ちゃんと狙い通りの結果を得られて内心ガッツポーズです。
[余談]
参戦チームの方に「このレースのためにカメラ買い替えたんですよ~」と話したところ、いい意味でドン引きされましたw
「青森のこんな田舎レースのために、金かけさせちゃうなんて申し訳ねぇ……」と、南部弁のイントネーションで恐縮される始末。
いやいや、それ程の価値があるんですよ、このレースはほんと。
OM-1 + M.ZUIKO DIGITAL ED 12-200mm F3.5-6.3で撮影。望遠端は若干解像が甘い…と評判のレンズですが、そんなに気になるかな?僕は十分だと思います。
同じレンズのまま広角流しも楽しめます!レース中にレンズ交換せずとも色んなアングルを楽しめるのは大きなメリット!
◇WEC 富士6時間レース (2024年9月)
軽量コンパクト装備で多彩な撮影表現
ジャパンオフロードレースと時系列逆転してしまいますが、モータースポーツ撮影に初めて実戦投入したのがこのレースでした。
レース撮影されてる皆様ならおわかりかもしれませんが、富士スピードウェイはランオフがかなり広く取られており、観客からコースまで非常に離れています。そのため、焦点距離の長いレンズを持ち込まないと、結構撮影するアングルに悩まされるサーキットといえます。
で、このために僕はレンズをもう一本仕入れておきました。お安く、ね。
「OLYMPUS M.ZUIKO DIGITAL ED 75-300mm F4.8-6.7 II」という、中古価格にして4万円もいかないようなレンズです。でも換算焦点距離にして150-600mmという、大砲のようなレンズと同じ領域をカバーします。
OM-1とコイツでトータル1kgの機材はまさに手持ち撮影向き。Z50時代のトータル2.5kgと変わって天国のような心地でした。実際にサーキット撮影となると、色んな写真を撮るために、様々なコーナーを練り歩きます。1日の歩数は優に2万歩を超すこともザラなため、軽量コンパクトな機材というのは疲労軽減に有効です。
また、OM-1のウリの一つともいえるモータースポーツ認識AFもいかんなく発揮してくれました。 マシンを追いかけて撮る際にありがちな「AFが迷子になって地面とかフェンスに食いつき始める」みたいな現象が大きく減りました。
さらに、手ブレ補正や連写性能も非常に優秀で、Z50時代よりももっと攻めた流し撮りができるようになったのも大きな収穫でした。
感覚的には、Z50だとシャッター速度1/50秒が限界かなって感じでしたが、OM-1では1/5秒にも気軽にチャレンジできるようになりました。WECの現場でも、1/5秒で撮りたいがためにF22まで絞りまくった結果、解像度が低下しちゃったんですよね。 おかげでWEC後、人生初のNDフィルターを買ったほどです。OM-1によって撮影技術や表現や広がっていく感覚、とても楽しかったです。
OM-1 + M.ZUIKO DIGITAL ED 75-300mm F4.8-6.7 II @富士スピードウェイ。この見た目で換算600mmを実現。そのギャップ要素に思わず萌えを覚えてしまいますね。
OM-1 + M.ZUIKO DIGITAL ED 75-300mm F4.8-6.7 IIで望遠端(300mm)。シケインにて。フェンス越しに撮っているが、それでも非常にシャープな描画を実現している。
OM-1 + M.ZUIKO DIGITAL ED 12-200mm F3.5-6.3でワイド端(12mm)流し撮り。この時はNDフィルターを持っていなく、絞りまくって撮影したので解像度が低下しちゃっています。ですがこの領域で流し撮りができるようになったことは非常に大きな体験でした。
◇WRC ラリージャパン (2024年11月)
夜間撮影も工夫次第で普通にこなせる!
ラリージャパンでの撮影でピックアップしたいのは、夜間撮影の性能です。本イベントでは、豊田スタジアムならびに岡崎総合運動公園でのSSSがナイトステージとなっていました。
マイクロフォーサーズ機で、しかもF値が特別明るいわけでもない便利ズームで挑む…。
カメラガチ勢の皆さんなら「諦めなさい」と優しく肩を叩くでしょうが、別に撮れりゃあええんです。
実際、照明設備が充実していた豊田スタジアムでは、シャッタースピードを落として流し撮りメインで攻めるスタイルであれば、意外と高感度ノイズに悩まされることはありませんでした。
岡崎総合運動公園は流石に照明が少なく、高感度ノイズだけでなくAF追従性能の限界も見えて厳しかったですが、シャッタースピードをゴリゴリに落として粘った結果、そこそこの収穫にはなったかと思います。案外なんとかなるもんですね。
また、高感度ノイズに関しては、「OM Workspace」という画像編集ソフトのAIノイズリダクション機能を活用する事で、多少軽減されます。実際、以下2枚ではその機能を適用してRAW現像しています。
豊田スタジアムSSSにて。シャッター速度1/80秒、F6.7、ISO1250です。(OM-1 + M.ZUIKO DIGITAL ED 75-300mm F4.8-6.7 II)
岡崎SSSにて。シャッター速度1/25秒、F6.7、ISO5000です。そりゃあフルサイズのハイエンド機には負けるでしょうが、意外と撮れるもんですね。(OM-1 + M.ZUIKO DIGITAL ED 75-300mm F4.8-6.7 II)
◇Rally of Tsumagoi (2025年2月)
-7℃の大雪でも安心して撮影!
Rally of Tsumagoiは、無観客開催を除けば、ほぼ毎年観に行っています。 今年は東日本選手権としての開催でしたが、ギャラリーコーナーが設置されると聞いて、迷うことなく観戦を決めました。
……が、このとき嬬恋村は、過去20年でも見たことのないような大雪に見舞われていたのです。除雪が追いつかず、競技車両のスタックも多発。競技進行にも混乱が出る中、我々観客は -7℃の吹雪の中で5〜6時間、屋外に立ち続けることになりました。
こうなると、もちろん人間の防寒対策も大事ですが、同じくらい大切なのが──カメラの耐寒性能です。
OM-1は防塵防滴性能だけでなく、耐寒性能も極めています。メーカーHPでは「低温下においても確実に動作するため耐低温 -10℃ を実現。あらゆる過酷環境下での使用を可能としています。」と謳っています。お陰で、雪山登山を楽しまれる方にも愛用されるようなカメラです。
そんなわけで、もしかしたら“日本一過酷なモータースポーツ観戦環境”とも言えるRally of Tsumagoiにおいても、OM-1は雪まみれになりながらも、確実に動作し続けてくれました。
また、今回の観戦エリアは割とマシンが近くまで寄るため、装着したレンズはM.ZUIKO DIGITAL ED 12-200mm。ボディもレンズも不安要素一切なく、撮影を楽しむことができました。
吹雪でもOM-1はしっかり働いてくれました!
あまりに雪が積もりすぎた結果、0カーがスタックしながら必死の思いでギャラリーエリア前に登場。もちろん、競技できるコンディションにないので、0カー判断でSSキャンセルとなりました。(OM-1 + M.ZUIKO DIGITAL ED 12-200mm F3.5-6.3)
◇フォーミュラE 東京E-Prix (2025年5月)
フェンス越しも任せられる写り!
フォーミュラEは電気自動車のフォーミュラレースで、ここ2年は東京ビッグサイト周りの駐車場や道路に仮設レーストラックを敷いて開催されています。
ただし、このコースでフェンスを避けて撮ることは至難の業だと思った方がよく、撮影にはとにかくフェンスをどうにかする必要があります。フェンス越しの撮影でひとつポイントとなるのが、ボケやすいレンズで撮影し、フェンスをとにかくボカすこと。
ただし、マイクロフォーサーズという規格は、フルサイズ機と比べてボケにくい撮影特性をもっています。この「ボケにくさ」がスナップ撮影とかではあまり好まれないのか、マイクロフォーサーズ不人気の要因となっています。
……ということは、フォーミュラEは厳しいか?と懸念していたのですが、実際撮ってみると意外と何とかなっちゃいました。
コース自体は割と観客から近いので、本当にフェンスさえどうにかなれば色んな撮り方が出来て楽しいイベントでした。それこそ換算600mmの暴力でマシンをアップで撮ってもいいですし、広角で東京湾を背景に流すのも良し。
大雨でも大活躍!
また、土曜日のFP2はかなりの大雨の中で行われました。このとき使用していたレンズは M.ZUIKO DIGITAL ED 75-300mm F4.8-6.7 II で、防塵防滴性能を謳っているレンズではなかったため、カメラカバーをかけて使用しました。
とはいえ、「Proレンズのような本格的な防塵防滴仕様ではないものの、OLYMPUSはProシリーズ以外のレンズでもある程度の防滴性に配慮した設計を行うメーカーですから、過度に神経質になる必要はありませんよ」と、購入当時に中古カメラ店の店員さんが仰っていました。 そのため、濡れた手で触る程度や、カバーの隙間から多少水が入り込む程度であれば、特に気にしなくてよいという安心感がありました。
OM-1 + M.ZUIKO DIGITAL ED 75-300mm F4.8-6.7 II。望遠端(300mm)でF6.7。平凡なF値でボケにくい印象ですが、割とフェンスが気にならない感じで落ち着いています。
OM-1 + M.ZUIKO DIGITAL ED 12-200mm F3.5-6.3。23mmの広角流し。フェンス越しにとるもう一つの解決策は流しちゃうことですが、いずれにせよOM-1、あるいはマイクロフォーサーズでもできることは多いです。
◇F1日本GP (2025年4月)
26cmルール内で超望遠を実現できる強み
最後にF1日本GPでの撮影経験をご紹介して終わりましょう。最近のF1日本GPにおいて特徴的なカメラのルールといえばこれですよね:
指定席の座席では大型望遠レンズ付きカメラの使用は周囲のお客様のご迷惑となりますのでお控えください。(望遠レンズ全長26cm以上不可)
この26cmルールに頭を悩ませるカメラ好きは毎年多いはずです。なにせレンズの物理的な長さがある程度焦点距離につながり、写真の迫力につながるわけですから。
でもこういう時に威力を発揮するのは、やはり換算2倍の焦点距離を実現するマイクロフォーサーズです。
実際にOM-1に以下のレンズを装着し、望遠端まで伸ばした寸法(フード除く)は以下の通り:
M.ZUIKO DIGITAL ED 75-300mm F4.8-6.7 II:22cm程度
M.ZUIKO DIGITAL ED 12-200mm F3.5-6.3:23cm程度
これで鈴鹿サーキットのルールを守りつつ、かたや換算400mm、かたや600mmの画角を実現できます。
OM-1 + M.ZUIKO DIGITAL ED 75-300mm F4.8-6.7 IIでデグナーカーブ。ここは観戦エリアから、場内道路とランオフエリア越しに見る形なので、600mm以上はないと厳し目なコーナーです。このエリアでも、スタッフが「26cm以内で使ってくださいねー」とアナウンスしていましたが、まさにそうしたルールを守りながらも、デグナーの迫力ある走りを収める事が出来ました。
OM-1 + M.ZUIKO DIGITAL ED 75-300mm F4.8-6.7 II。F1は、他のどのカテゴリーよりもスピード域が高く、流し撮りの難易度も格段に上がります。
さらに今年は観客数が非常に多く、観客と被る形での撮影を強いられる場面も多くありました。そうした状況の中、あえてシャッター速度を遅く設定し、流し撮りによって手前の観客をぼかして消し、迫力ある写真の撮影を試みました。
このような写真を収めるためには、障害物が横切っても途切れることなく被写体を追従できる認識AFの性能が欠かせません。こういった難しいシチュエーションでも確実に写真を収められる点は、OM-1の高いポテンシャルを物語っています。
■ 最後に ■
APS-Cのローエンドミラーレス機であるNikon Z50から、マイクロフォーサーズのハイエンド機であるOM SYSTEM OM-1に乗り換えるまでの経緯と、モータースポーツでOM-1を使用してみた感想を書いてきました。
サーキットでOM-1を10か月使用してきた印象として…
軽量コンパクト:持ち運びが楽になり、周囲への迷惑も減らせる
防塵防滴&耐寒性能:砂埃が舞おうと、大雨・大雪に見舞われようと撮影できる安心感
比較的安価な機材コスト:低廉にフラッグシップ機の性能や望遠撮影を楽しめる
工夫次第でクリアできるデメリット:不利な撮影条件でも、撮影方法を工夫することで十分に対応可能
といったところに大きな魅力を感じています。
現状、OM-1を手に入れた後悔は全くなく、買い替えなんて事は一度も考えた事は……いや、OM-3出た時にちょっと迷ったな
でも現状はZ50の時よりも楽しい写真ライフを送れてると思っています。Z50だったら撮れてなかったかもしれない写真を撮ってますし、換算600mmクラスで行けば明らかに持ち運びが楽になってますし。(でもZ50いいカメラだったな~っていうのも本心)
以上、マイクロフォーサーズでレース撮影楽しめてるよ!ってことを宣伝すべく、記事にしてみました。
P.S. OM-1で2輪もめっちゃ撮れるよ!@筑波サーキット