atproto/bskyインフラ運用の現在
この記事はBluesky / ATProtocol Advent Calendar 2025の7日目の記事です。
惜しくも前日(6日目)で投稿が途切れてしまいましたが、少しでも間を埋めるべく突っ込んでみます。
最近Blueskyを代替するatprotoインフラ構築の動きについて触れる機会が多かったため、知る限りの現状を備忘録的に残しておこうと思います。
個人的な興味の範疇からは少し外れるため、見落としはありそうですが、コメントなどで補足いただければ幸いです。
以下ではBlueskyのrelayやappviewと同等機能を持つインスタンスを運営している/しようとしている活動について紹介します。
PDSはある程度の数があるので、PDS一覧などを参照してもらうこととして、今回はPDS運用のみのものは言及しません1。また、appviewやrelayに関しても、個人的な実験を公言しているものや、機能が限定的なもの(特定のPDSのみをクローリングするrelay等)はBluesky代替という趣旨から外れるため、ここでは対象外とします。
12/09追記: ちょうどPDSまとめ記事が登場したので、PDSについてはこちらを参照してください。
Blacksky
BlackskyはBluesky Social初期から活動している黒人コミュニティです。
現在もメインターゲットは黒人ですが、一部はそれ以外の人にも開かれています。
発足当初はBluesky上のフィードによるコミュニティ形成を行っていましたが、現在ではPDSやrelayの運用を初めています。最近はBluesky代替appviewも動き始めており、この手の運動の中では最先端を行っていると言えるでしょう。
ほとんどのコンポーネントを実装から行っている点も特徴です。ウェブクライアントはBlueskyのフォークですが、PDSやrelayは独自のRust実装を使っています。
Spark
Sparkはatproto上のTikTok的な動画サービスなのですが、独自のPDSとrelayを運用しています。
appviewもBlueskyとは別(非互換)なので、既にBlueskyインフラから独立を果たしていると言えますが、bskyの動画投稿もsprk appviewに取り込んでいます。
まあ、まだベータ中で誰でも使えるわけではないのですが。一般公開が計画から大幅に遅れてる点は少し心配です。
独自のlabelerを持っており、モデレーションともしっかり向き合おうとしているあたりがatprotoサービスとしても意欲的だと思います。
Gander
Ganderはカナダで運営されるSNSプラットフォームです。利用者としてはカナダ人以外も受け入れています。
現状はクローズドベータの段階ですが、relayもappviewも独自に持っていると思われます。
ただし、appviewがbsky互換かは不明です。独自機能がありそうなので、純粋な互換ではないと思いますが、bsky投稿を表示する機能はあるかもしれません。
microcosm
microcosmは個人開発者が提供している、小規模atprotoアプリのためのインフラツール群です。
constellationのような独自ツールが主力なのですが、複数のrelayやJetstreamも公開しています。
一時期実験的にbsky appviewも提供していましたが、今は無いようです。
UpCloud
UpCloudはVPSなどを提供するクラウド事業者で、atprotoやActivitiPubに関心を示しています。
現時点では事業として何かしているわけではないものの、独自のrelayを立ち上げるなど、atprotoインフラの運用には積極的なようです。
将来的にはappviewにも手を出すかもしれません。
Eurosky
Euroskyはヨーロッパで独自のatprotoインフラを構築しようとしている団体です。Free Our Feedsがバックについており、元々独自インフラの構築を志していたFlashes(画像重視のBlueskyクライアント)開発者もコアメンバーとして参加しています。
米国のプラットフォームから脱し、欧州が主権を持つソーシャルメディアを志しています。
その性質上、ガバナンスや資金調達を重んじており、現時点ではサーバー運用などは行わず組織としての足固めに近い段階に見えます。
技術的には、当面はCoCoMoというモデレーション基盤2の準備を行なっています。
Northsky
Northskyは2SLGBTQIA+を主な対象としたマイノリティのためのコミュニティです。
現時点ではPDS以外のインフラ運用については言及していませんが、その理念から、独自のモデレーションポリシーを持つbsky appviewを始める可能性はありそうです。
zeppelin.social
https://whtwnd.com/did:plc:uu5axsmbm2or2dngy4gwchec/3ls7sbvpsqc2w
zeppelin.socialは2024年7月から2025年9月にかけて個人開発者によって運用されていたbsky appviewインスタンスです。
代替appviewの運用が可能であることの実証実験として実施され、その後目的を果たしたとして閉鎖されました。
既に終わった試みではありますが、代替インフラを立ち上げるにあたっての技術的課題やコストについては参考になると思います。
その他
relayやappviewそのものを提供しているわけではないですが、GrazeやSlicesがその代替になることはあるでしょう。
前述したmicrocosmでappviewを代替した事例として、Red DwarfというBlueskyクライアントが知られています。
また、ここまでに紹介した以外にもいくつかのbsky appview実装の存在が知られています。これらもインフラ構築の一助となる存在ではありますが、オープンに運用されているインスタンスは見つからなかったため、ここではスコープ外として割愛します。
Footnotes
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個人的には、大規模なPDSプロバイダが増えることにあまり意義を感じていないという事情もあります。 ↩
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Eurosky LiveやGitHubを見る限り、CoCoMoはBlueskyのOzoneを独自改造したもののようです。 ↩