僕らのフロンティア ~Blue Blue SKy~

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僕らのフロンティア

Blue Blue Sky
目の前にある空は
すごく綺麗で 誘うよ じょうずに

Blue Blue Sky
輝くあの赤い実がほしいよ
進め 僕らのフロンティア

「僕らのフロンティア」より引用

  • 作詞:只野菜摘
  • 作曲・編曲:広川恵一(MONACA)
  • 歌: Wake Up, Girls!(吉岡茉祐、永野愛理、田中美海、青山吉能、山下七海、奥野香耶、高木美佑)

Wake Up, Girls! / 僕らのフロンティア(Music Video)のclip

本記事はWake Up, Girls! Advent Calendar 2024 4日目の記事です。

Wake Up, Girls!とは

Wake Up, Girls!というのは宮城県の仙台市を拠点とする架空のアイドルユニットである「Wake Up, Girls!」を描いたアニメ作品『Wake Up, Girls!』シリーズと、その作品のため2012年から2013年にかけて開催された一般公募オーディションの合格者である七人によって結成され、東京を拠点として活動していた実在の声優ユニット「Wake Up, Girls!」のことである。架空のアイドルユニット、作品の名称、実在の声優ユニット、すべてが「Wake Up, Girls!」という名前だ。

ハイパーリンク

Wake Up, Girls!(略称はWUG。ワグと読む)は作中の登場人物の設定(名前など)や出来事が現実で活動するWUGのメンバーのプロフィールやそれをとりまく状況とリンクしているという特徴がある。このことを制作側は「ハイパーリンク」と呼んでいた。

たとえば作中のアイドルグループWUGのセンターのキャラクターの名前は島田真夢(しまだまゆ)であるが、真夢を演じるのは吉岡茉祐(よしおかまゆ)である。どちらも名前の読みが「まゆ」で同一となっている。誕生日はどちらも11月7日だ(生年は違う)。かつてコミケで頒布されたスタッフ本に掲載されていた初期設定資料に掲載されていた各キャラクターの名前を見るに、作品の制作にあたって仮の名前が設定された上で作業を行い、オーディションの合格者が決まった段階で名前が同じ読みの別のものに変更し確定されたようだ。名前だけでなくキャラクターのビジュアルや性格なども調整されたようにも見える。

WUGは元々は2011年3月11日におきた東日本大震災を契機の一つとして生みだされ、作品の舞台も宮城県の仙台や気仙沼など、東北を中心としたものになっている。作中のメンバーのキャラクター設定もセンターである島田真夢以外は東北の出身だ。作中のWUGのメンバーだけでなく、家族やそのファンにも明に暗に震災の影響があることが描かれている。ストーリーや設定だけでなく、多くの楽曲にもその背景は反映されているし、実在WUGのメンバーである七人のうち二人(あるいは三人)は東北の出身だ。

WUGとソーシャルメディア(SNS)

Twitter

WUGの劇場公開と最初のTVシリーズの放送があった2014年は日本においてTwitterがオープンなソーシャルメディアとして重要な位置を得てしばらく経ったくらいだろうか。2011年3月の震災でTwitterが注目されたころTwitter Japanも設立されている。

そういったタイミングであったからか、Wake Up, Girls!は最初からTwitterにて公式アカウントが作成され、運用されていた。

ただ、メンバーの公式のTwitter個人アカウントが作られることはなかった。

ブログ

メンバーの公式Twitterアカウントが作られる代わりに毎日、アメブロにおいてブログで記事が公開された(→Wake Up, Girls!オフィシャルブログ Powered by Ameba)。月曜日が吉岡茉祐、火曜日が永野愛理、という風に、七人に担当曜日が割り当てられて発表されていった。ブログというメディアは日本においては「Web日記」「個人ニュースサイト」という形で1990年代から日本では存在していたが、ブログという言葉や技術が改めて導入されてからは拡がりを見せ、2004年頃の真鍋かおりや中川翔子のブログは人気となり、タレントの宣伝メディアとしても使われることも多くなっていた。その後も「はてなブログ」「Note」などのブログサービスは人気である。

WUGのブログは2019年の解散後も消されずに維持されており、当時のことを伝える貴重な資料として今でも参照できるのは非常にありがたい。アイドルの解散や卒業と共にそのネット上の痕跡は雲散霧消することも多い中、これはWUGが語られ続ける上で重要なアドバンテージだと言える。

2ちゃんねる・まとめブログ・ニコニコ

Twitterやブログは本名・実名であるかどうかはともかく書き手の区別ができるが、表面的には匿名のサービスである2ちゃんねる、およびそれをまとめた「まとめブログ」はそのピークが2014年頃くらいだったと言えるかもしれない。2014年2月には「2ちゃんねる」の管理者権限をめぐる騒動があり、Twitter等の他メディアの勃興にともなって注目度は下がっていく。

しかし、まとめブログを通じてネット上への影響はまだ存在していた。まとめブログについても内容の真偽はともあれ注目を浴びれば広告収入を得られることから、悪口や陰口、論争を呼び起こすような出来事などを面白おかしく書けば勝ち、という構造にあった。そういったこともあり、必ずしも作画の面などで出来が良くなかった2014年のテレビシリーズは恰好の収益化のネタとなってしまった。プロジェクトの原案者でもある山本監督が積極的に議論をするタイプだったこともまた、その内容の是非に関わらずこの状況を加速した。

単なる「出来が悪い」「演技が下手」という物言いならまだいいほうで、情報ソース不明の怪情報も多くあり、WUGのことを「ワキガ」と呼ぶ人も多く見られた。なにかやらかしてしまった人、あるいは突っ込みを入れやすい発言があると今でもTwitterやYahoo!ニュースのコメント等では「どんなことを言ってもいい対象」として炎上の種となるが、2014年当時のWUGは作品もユニットもそういう対象だったような空気が一部にあった。七人やファンのことならどんなに嗤ってもいいもの、みたいない人もそれなりに見られた。

今となっては2ちゃんねる(5ちゃんねる)やまとめブログのプレゼンスは低下したが、WUGのメンバーの「ぼっち・ざ・ろっく!」「ウマ娘」などでの活躍が報じられたり、ライブのリバイバル配信があるたびにXやYouTubeのコメントに、その時の空気感をまとったコメントが顔を覗かせる。場合によってはそれが個々の正義感・倫理観に基づくものであるが故にやっかいな問題である。

空白期間

さてWUGは2015年12月に劇場公開された『Wake Up, Girls!Beyond the Bottom』および、2016年初頭の「Wake Up, 宮城!触れ愛プロジェクトin台湾」をもって作品の展開が止まってしまうこととなった。

理由は正直なところよくわからない。もちろん、各立場によって主張があることは知っているし、いろんなところから噂話を聞くこともある。ファンである以上当事者ではあるが、直接に制作の関係者ではないからその真偽については保留するしかない。

そんな中、リアルのユニットであるWUGは他の作品とのタイアップや、アーティストのWUGという「作品」としての活動で社会とのつながりを絶やさないよう奮闘を始めた。

  • 2016年2月6日 Nendoroid 10th Anniversary Live
  • 2016年7月~8月 Wake Up, Girls! 3rd LIVE TOUR「あっちこっち行くけどごめんね!」
  • 2016年10月~12月 TVアニメ『灼熱の卓球娘』EDテーマ「僕らのフロンティア」
  • 2017年4月~6月 TVアニメ『恋愛暴君』OPテーマ「恋?で愛?で暴君です!」
  • 2017年5月13日 アニュータライブ2017「あにゅパ!!」
  • 2017年7月~9月 Wake Up, Girls! 4th LIVE TOUR「ごめんねばっかり言ってごめんね!」
  • 2017年7月~9月 TVアニメ「異世界食堂』OPテーマ「One In A Billion」(May'nとのコラボユニット、Wake Up, May'n!として)
  • 2017年8月27日 Animelo Summer Live 2017 THE CARD 3日目(Wake Up, May'n!およびWake Up, Girls!として出演)

ここに列挙したライブで見せたWake Up, Girls!のパフォーマンスは神がかっていたと言ってよいだろう。それまでは新人七人が奮闘する姿を見せるという、オーディション番組で参加者が見せる姿に重なるようなものであったが、「フェスで勝ちに行く」アーティストとして歌もダンスパフォーマンスもトップクラスに磨きかがれたものに脱皮していった。

フロンティアへ

そんな中でも特筆すべきトピックは「僕らのフロンティア」という楽曲による『Wake Up, Girls!』という作品外のタイアップである。作品の外へ飛び出し青い空へ飛び立ち、フロンティアを開拓していく決意していく姿は当時のことを思い出すと今でも涙腺が緩んでしまう。彼女達の姿勢と筆者自身が当時置かれていた立場(いろいろあって社会から離れてしまった)がどこか重なっているからだろう。

この楽曲のリリースにあたっては、僕らのフロンティア BLUE SKYキャンペーンというキャンペーンが開催されたことも印象に残っている。

※ちなみに、このキャンペーンのロゴはJAL系列の売店だった「BLUE SKY」のパロディです。

社会とのつながり

WUGは東日本大震災をきっかけに産まれたと書いたが、それだけではない。残念ながら日本は災害が絶えることがない。

リーダーの青山吉能の出身地である熊本ではは2016年4月に大地震が発生し、多くの被害があった。2017年3月18日に開催された「ソロでイベント、やらせてください2017 - 青山吉能ソロイベント『ただいま、おかえり。』」にて上演された「青山吉能 一人芝居 わたしの樹 ~Bloom of Life~」では、その地震をきっかけに熊本や家族と青山とのつながりが描かれた。ちなみにこの一人芝居の脚本は、初対面で喧嘩した相手の吉岡茉祐である(→今週の総括・*・:≡( ε:)よぴ144。)。

2017年3月26日に岩手県の盛岡で開催された「AEONプレゼンツ がんばっぺ岩手!Wake Up, Girls! チャリティ・ミニコンサート」は震災から5年を経た東北の「にぎわい」への貢献、また、前年の台風10号で甚大な被害を受けた岩手へのチャリティという側面があった。この岩手にて初披露されたWUGの新曲「TUNAGO」は岩手出身の奥野香耶がセンター、その両脇を宮城出身の永野愛理と熊本出身の青山吉能が並び固める振付になっている(振付担当は永野愛理)。綴りが「TSUNAGO」ではなく「TUNAGO」という六文字になっているのは東北の六県を表現しているとのことである。

このMVにもあるよう「つながり」というのはWUGのテーマの一つであろう。メンバーとファン、ファン同士、あるいは社会とのつながりを常に意識させるのがWUGであった。

新章、そしてRun Girls, Run!

2017年10月、『Wake Up, Girls!新章』が放送された。待望のTVアニメシリーズ2期である。しかし、制作スタッフ総入れ替えで作られた本作はファンの間にも分断を産んでしまった。TwitterではWUGのファン、ワグナーの間でも論争が発生した。正直なところ私も冷静に語ることは難しいので、今度リリースされる作品のBlu-ray BOXを機会に振りかえられたら、と思う。

この作品で生まれた3人組のユニット、Run Girls, Run!(略称RGR、通称ランガ)のことも忘れてはならない。WUGの妹分のユニットとして生まれたが新章にまつわる不穏な空気や、WUGの解散騒動によって計画時には想定していたかもしれない初速の支援が得られないという逆境に襲われてしまった。いろいろあったといえ作品の支援も得られたWUGに比べて不利な状況にあった。また、『キラッとプリ☆チャン』での経験はメンバー個々人のキャリア形成としては大きなものがあったが、ユニットとしては主題歌を担当したという以上のリンクがなく、『プリパラ』でのi☆Risのような爆発的な展開にはつながらなかった。

そんな中でも活動を続けて実力を蓄え、アーティストとして油が乗ってきた時期にコロナ禍によって満足に活動ができない状況に陥ってしまった。そして2023年3月に解散してしまった。

本記事はWUGについてのものである以上、これ以上は踏み入らないが、2017年のワンフェスでのお披露目から、2023年3月の解散までRGRのほぼすべてのライブやイベントに参加していた程度のファンとしては逆境はありつつも比較的恵まれていたWUGとの対照を実感しているため複雑な気持ちを抱いている。

Blue, Bluesky

WUGやRGRを追っかける上で情報を得たいからという個人的動機で2015年からWUG News(非公式)というTwitter(現:X)のアカウントを、2017年からRGR News(非公式)というXのアカウントを手動で運用してきた。Xや体力の続く限り動かし続けたいと思っている。

ただ、Xはオーナーが代わって残念な状況になってしまった。

というオーナーの発言にあるように、XはPvP、すなわち、利用者同士が戦うゲームになってしまった。流れてくる不快な広告や釣り投稿を避けるゲームとも言える。あるいは、おかしな発言をするアカウントを協力プレイで弾を撃ち込んで炎上させるシューティングゲームかもしれない。

Xで投稿や画像、ビデオ、長文を扱う機能やサブスクリプション機能によって収益を得られるようにした代わりに、Xから外への離脱を防ぐために外部のリンクを張ったポストは冷遇するアルゴリズムが採用された。どんなにフォロワーが多くても、その宣伝効果は低くなっているようだ。

かつてはアカウントが無くても外のサイトとの連携が充実していて見やすかったため、公式サイトの新着情報のページの代わりにTwitterのタイムラインを貼ることが流行ったが、今はXで話題になった投稿しか表示されなくなってタイムラインを貼る意味がなくなってしまった。

そんな中、Twitterの内部プロジェクトとして始まったBlueskyが登場した。今や最初の出資者である元TwitterのJack Dorseyとも縁も切れ、独立した存在になっている。技術的に興味深いものがあったために2023年3月にはアカウントを作成して触ってはいた。じわじわと利用者が増えてはいたが、Xに比べたら少なかったので、興味のある情報を得る場所ではなかった。

じゃあ、自分で情報を集めて流せばいい、というWUG NewsやRGR NewsのTwitterアカウントの作成動機を再び思い出し、アカウントを開設した。Xではすっかり公式アカウントのリポストbotとなっているが、Blueskyではリポストは一切行わない運用に切り替えた。

相変わらず手動での投稿による運用であるため、速報性や網羅性では問題があるが、良ければ必ずBlueskyにアカウントを持っている方はフォローして欲しい。

また、X(Twitter)ユーザーのためのBlueskyガイドという解説記事も書いたので参考にしてください。

Blueskyのプログラムのコードは公開されており、不具合の修正提案や、画面のメニューなどの文字の英語からの翻訳はユーザーも参加できます。私もいろいろ提案を行い、採用してもらってます。

この解説記事や、本記事はいずれもWhite WindというBlueskyの基盤にあるAT Protocolという技術が使われているブログサービスで書かれています。単なるTwitter(X)っぽいSNSではない面白さがあるので、これからもBlueskyというフロンティアを進んでいこうと思っています。

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Takayuki KUSANO

@tkusano.jp

自称技術者

https://linkat.blue/tkusano.jp

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