40代の浅いモタスポファンがフォーミュラEにはまってサム・バードと握手するまで

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回想:1991年・フォーミュラ1

私の小学生のころはF1人気のまさに隆盛。兄といっしょに深夜の地上波番組を録画して,朝に早起きしてそれを見てから登校していました。

いちばん記憶に残っているのは1991年,中嶋悟さんのティレル・ホンダのマシンがとてもかっこよかった。チームメイトのステファノ・モデナも好きでした。
中嶋悟さん,鈴木亜久里さんという日本勢を除くと,いちばん好きだったのはウィリアムズ・ルノーのリカルド・パトレーゼ。マシンと名前(特に後者)がかっこよかったから(当時から浅いファンっぷりをいかんなく発揮)。自由研究でパトレーゼのマシン描いた凧作りました。

1991年は覇王アイルトン・セナが開幕4連勝をはじめ,ウィリアムズのマンセル,パトレーゼをも圧倒しチャンピオンに。日本GPのゴール直前,セナがベルガーに勝利をゆずったシーンは,当時クラスで「かっこよかった」と評判だったのですが,後年の記事を読むと,当時かなり物議をかもしたようですね?

四半世紀後,2014年。――フォーミュラE,始動。

私のモタスポファン歴は,ここから20年以上途絶することになります。中学校に入って以降は,部活からなにやらでF1を見る時間もなくなり,「モータースポーツ」ということばすら頭から消えてしまっていました。

30も過ぎた2014年,私は結婚しました。当時の狭いながらも古びた我が家(いいとこなし)にて,夜の家事の時間が暇だなあと思っていたのですが,その年に耳に飛び込んできたフレーズ,

――フォーミュラE。

電気自動車でレースが始まるのですか?
F1はもう20年以上見てないからほとんどわからないけれど,新しいカテゴリなら一から追えるなあ。 電気自動車ということはモーター音?

本当に,ちょっとした興味だったと思います。
皿洗いをしながら,棚の上にノートパソコンをセット(有線)。YouTubeでフォーミュラEを検索。 おお,レース動画があがっている!

…………いいじゃない!

モーター音,私にはどストライクでした。
景観もすばらしい。浅いモタスポファンはこう考えた。

「フォーミュラEって,オールモナコみたいなもんだな!」

「市街地レース」ということばすら出てこない,四半世紀ぶりにモタスポに興味を持った浅いファンは,一気にフォーミュラEのとりこになったのです。

サム・バードを応援。

さて,せっかくなら応援するドライバーを選びたいものです。
幼いころにマシンがかっこいいという理由でティレル・ホンダとウィリアムズ・ルノーが好きだったわけで,はじめはやはりマシンの見た目から。

ヴァージンのマシンがメタリックでかっこいい。(参考
このマシンに乗っているのは,「BIRD」……バードか。
どなた?

四半世紀ぶりにモタスポを見た人間が,当時のフォーミュラEでわかるのは,かろうじてトゥルーリ,あとはネルソン・ピケJr.やニコ・プロストといった二世ドライバーのみでした。
でも,たびたび上位に入ってくるこのバード……かっこいいなあ。

ということで,種々のWeb記事をあさりました。
上位勢の中では,めずらしくF1出身のドライバーではないのか。いいね! 生粋の新カテゴリ参戦者という感じで。
きっかけはそんなところでした。浅い!

サム・バード,奮戦。

かくしてフォーミュラEとサム・バードを応援し始めた私ですが,バードは実に私好みのドライバーでした。
毎年優勝する! 上位勢とのつばぜり合い! 巧みなオーバーテイク!
そしてチャンピオンにはもう少しで届かない!(重要)

無冠の強者,大好きなんですよねえ……。
シーズン1は総合5位(F1未経験では最上位),シーズン2・3は総合4位。

そしてバードのFE人生のハイライトとなるのが,シーズン4でしょう。
その年,圧倒的な強さを見せるジャン=エリック・ベルニュに唯一喰らいついていったのがバードでした。最後のニューヨーク二連戦を残して,優勝の可能性を残していたのがベルニュとバードのみで,特集動画も作られたほどです。(参考
結局,一戦目でベルニュが5位入賞を果たし,最終戦を待たずに王者を決めるわけですが,この年は熱かった。
ちなみに,ルーカス・ディ・グラッシが二連戦を1位・2位で飾り,バードは総合2位すら逃したのが,彼らしいご愛敬。

マシンの乗り換えなしとなったGen2時代以降は,シーズン1~4までの強さにややかげりは見えましたが,それでもシーズン7までは各シーズン一度は優勝を経験。シーズン1からの7年連続優勝は,全レーサー中,バードのみの記録です。
だから私は,最大の敬意を込めて,彼をこう呼び続けます。

「最強の無冠」。

バードに会いたい。あれ,会えるかも?

私にとってモータースポーツというのは,ブラウン管やディスプレイの向こう側の物語だったのですが,フォーミュラEとバードを追っているうちに,ある感情がわいてきました。

フォーミュラEを生で観たい。
バードに,あなたのファンですって伝えたい。

浅い浅いモタスポファンだけれど,こんな思いを持ってもいいじゃないか。
生まれた愛息は,エバンスとセッテ・カマラに会いたいらしい。いいね。お父さんといっしょに,行くか,世界へ。コロナが落ち着いたら……!

……といいつつ,たぶん,フォーミュラEのレースは観られないのだろうと思っていました。少なくとも,バードが現役の間は。
コロナはまだ予断を許さないし,息子は海外に連れて行くにはまだ小さすぎるし。どうにも私は小心者で,「FE観戦のために世界に行くぞ!」という決断ができるタイプでもないし。

息子と,エバンスやバードに会えた時のために,英語の練習をキャッキャしながらする時間だけでも楽しいし,それでいいかなあ……と思っていました。



2022年10月4日,フォーミュラEに係る開催協定締結式。(参考



は?
本当ですか? 東京で?

会えるかもしれないんですか,バードに。

2024年3月30日,東京ビッグサイト。

チケットの抽選にあたったことは,本当に幸運でした。Blueskyのフォロワーさんでも,とれなかった方が多かったようで,私のような浅いファンがとれてしまったことには若干の申し訳なさもあるのですが,お許しください。とにかくこの日がやってきたのです。

8時からのフリープラクティス2から観たい! と妻と息子に願ったところ,意外にも二人ともノリノリ。一日楽しもうぜ! と言ってくれました。そういうわけで,ほぼ始発で出発して朝一番から乗り込m,おい息子,起きてくれ。

若干息子が寝坊したので,到着したのはFP2開始直前あたり。
モニターに掲出されていたのは,「マクラーレンのピットウォークに応募しませんか?」という案内。すぐに時間切れになってしまいました。

マクラーレンは,今年からバードが所属するチーム。
抽選に当たっていれば会えたのかもしれないなあと思いつつも,まあ倍率すごいだろうし……まずは何よりFP2だ! と落ち込むこともなく,家族で着席。

ついに! フォーミュラEのマシン(第三世代・Gen3)が!
私たちの目の前を! 駆け抜けてゆく!

家族三人,妻も息子も私も,ただただ感動の歓声をあげました。
風を切り裂いて,マシンが私たちの目の前を,確かに走っていたのです。
10年間,モニターの向こう側だったあこがれの世界に,確かに私たちは存在する。ただ,感動だったのです。

僥倖

僥倖というのは,唐突に降ってくるものだと知りました。 FP2が終わり,グランドスタンド裏の屋台前のテーブルで休憩していたときに,

「すみません」
「はい」
「私どもは,フォーミュラEのスタッフのものですが,ランダムに観客の方にお声がけしています。このあとの,マクラーレンのピットウォークに,家族でお越しになりませんか?」

あの,私,今日,ジャガーの帽子とTシャツなんですけど大丈夫ですか。とか。
あの,私,今日,バードの応援のためのうちわ作ってきたんです。ほら。とか。

いろんな考えが一瞬のうちに頭の中をよぎって。

「ぜひ!」
家族三人の声が重なりました。

……

マクラーレンのピットで,まず出迎えてくれたのはジェイク・ヒューズ。
うわー,本物のヒューズだ! 先頭に立たせてもらったから間近で見られる!

「……Oh, you're wearing the wrong shirt.」

緊張している私を見てか? ヒューズの第一声が,私を見てのそれでした。そうだよなあ。マクラーレンのピットに全身ジャガー人間がいるんだもんなあ。
ピットウォークに参加されていた方々が大爆笑。私の緊張も一気にほぐれました。ありがとうございます! 今度は絶対あなたのうちわも作ってきます!

と思っていたら,マクラーレンのスタッフの方が,私のうちわをたくさん撮影してくれました。
マクラーレンFEチーム内で共有してくれるならうれしいなあ……と,ヒューズの話を聞きながら,ピットの様子を家族で見学していたら,

ふと,肩を指で叩かれました。
マクラーレンのスタッフの方でした。
そのスタッフの方の指が,後ろへ動いて。

40を過ぎた男の絶叫が,響きました。

「Nice to meet you.」「I've loved your driving since season1.」
みたいなことを言った気はします。覚えてないのです。

でも,私のひっどい英語に,あきれながらも笑ったくれた顔は,はっきり覚えています。

10年前に,応援することを決めたサム・バードの手を,私は確かに握っていたのです。

image

これからも。

こうして,浅い浅いモタスポファンの私は,信じられない幸運に恵まれて,大ファンのサム・バードと握手して,写真を撮る機会に恵まれました。

東京E-Prix自体の思い出も写真もたくさんあるし(スタート前,やったぜ目の前にバードのマシンが! なぜなら最下位グリッドだから! とか),東京E-Prixが実現するのはいいけれど,シーズン10,バードは現役なのか? とかすごく心配したこととか,語りたいことはたくさんあるのですが,今日はとにかく,40代の浅いモタスポファンがフォーミュラEにはまってサム・バードと握手するまでを書きたくて,このエントリをしたためました。

バードは今年,シーズン7以来の優勝をサンパウロで決めるなど,復活の徴候を見せる一方で,シーズン全体としては苦戦しています。年齢(37歳)からしても,来期のシートがあるのかはわかりません。

しかし私は,10年間追い続けて,握手することの叶ったサム・バードを,これからもずっと追い続けます。サム・バードに出合わせてくれたフォーミュラEにも,心から感謝します。

みんな聞いてくれ。
いいぞ,フォーミュラE。いいぞ,サム・バード。

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フォーミュラE をはじめとするあらゆる四輪モータースポーツの浅いファン。FEではシーズン1からサム・バード推し。ヘッダーは妻が2020年の息子の誕生日に描いてあげた,エンヴィジョンのGen2に乗る息子。
近鉄バファローズ→オリックス・バファローズのファン。

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