我が家とセルジオ・セッテ・カマラ。
フォーミュラEのシーズン11のレギュラードライバーが,開幕4日前になってようやく確定しました。
新興KIRO RACE Coは,ダン・ティクトゥムとダビッド・ベックマンの起用を発表。
この瞬間,昨年度ERT・フォーミュラEチームのレギュラードライバーだった,セルジオ・セッテ・カマラが,フォーミュラEを離れることが決まりました。
シーズン6~10まで奮戦してきたセッテ・カマラがフォーミュラEを離れるということは,我が家にとって大きなショックです。
なにしろ,フォーミュラE(のBSフジハイライト)を録画したブルーレイディスクのラベルが,愛息たっての願いで,当時ドラゴン/ペンスキーに所属していたセッテ・カマラですからね!
世界でもめずらしい,セッテ・カマラをラベルにする家庭,それが我が家です。
ミッチ・エバンスとセルジオ・セッテ・カマラのファンである息子が,東京E-Prixではおふたりに会えなかった話,そして私はセッテ・カマラに会えた上に,とても優しくしてもらった話をしたためたいと思います。
セルジオ・セッテ・カマラという男。
仰々しいサブタイトルをつけてしまいましたが,私のような浅いファンよりは,これを読んでくださっている方のほうが,よほどセッテ・カマラについては詳しいかと思います。
2020年にスーパーフォーミュラのレギュラードライバーとなるはずだったものの,新型コロナウイルス感染症の流行によって,1戦しか参戦することが叶わなかったこと。けれど,そのレースでポールポジションを獲得したこと。
フォーミュラEでは,そのコロナ禍に突入したシーズン6のベルリン6連戦からジェオックス・ドラゴンでデビューしたこと。シーズン6~8はジェオックス・ドラゴン→ドラゴン/ペンスキー,シーズン9・10はNIO→ERTという,こう言っちゃなんですが弱小チームを渡り歩き奮闘し続けたこと。
参戦5シーズン連続で表彰台なし,デビューから66レース連続で表彰台なしは,現時点におけるフォーミュラEの最長記録です。
最高位は,シーズン7・第2戦・ディルイーヤにおける4位。
シーズン最多入賞は,今年のシーズン10における3回。
特筆すべきは,5年間でリタイアを3回しかしていないことでしょうか。(DSQ,DNSなどはありますが)
決して恵まれないマシンにおいて,しっかりと走り切り続けた男,それがセルジオ・セッテ・カマラであると言えるでしょう。
そんなセッテ・カマラのドライビングが好きだという息子,幼いながらにいい感性だと思っています。
2024年3月30日,東京E-Prix・ピットウォークにて。
幸いにして今年の東京E-Prixのチケットに当選した我が家,妻と息子と私とで,朝からFP2,予選と楽しみました。
予選が終わり,いよいよピットウォークの時間,息子はエバンスとセッテ・カマラに会うことを楽しみにしていたのですが,ほぼ始発で出発したこともあり,疲れてしまったようです。
「レースは観たいから,お昼は休むことにする」という息子。
「ピットウォークは任せた,エバンスやセッテ・カマラのサインがもらえそうなら頼む」という妻。
託された私は,いざピットウォークへ。
ジャガーはチームが好調なこともあり,なかなか長い列。ひたすらカードにサインをするエバンス,キャシディ両氏。
「ミスターエバンス,マイサン,ラブズ,ユアドライビング」
思い切って声をかけると,少し顔を上げて微笑んでくれました。ありがとうエバンス! やさしい!
そして向かったのはERT。
ちょうど人の波が途切れたところだったのか,ティクトゥムとセッテ・カマラが談笑中でした。
本物のセッテ・カマラだ! あの! 我が家のブルーレイ,あなたなんです! ユーアーブルーレイ。違うな。なんていえばいいんだ。後ろに人も待ってるな。いいや。当たって砕けろ。
「ミスター,セッテカマラ?」
思い切って声をかけると,身体をこちらにしっかり向けて,笑顔で少し首をかしげてくれました。
「アー,マイサン,セブンイヤーズオールド,ラブ,ユア,ドライビング,アー,フロム,ディーエス,……ソーリー,ドラゴン/ペンスキーズ,イラ」
(※言いたかったこと:7歳の息子が,ドラゴン/ペンスキーのころからあなたの大ファンなんです!)
身振り手振りで! なんとか伝わって! 40代にもなってまともに会話もできないこの英語で!
たぶんセッテ・カマラ的には「あ,駄目だこいつ英語できねえわ」(若林)みたいな状態だったと思うのですが,一生懸命耳をかたむけてくれて。
「Oh! Where is he?」
私にもわかる英語で返してくれました。
「アー,……ヒー,イート,ランチ」(向こうを指さしながら)
三単現のsとかは知らない。
でも伝わりました。
「なんだよもう!」のようなことばとともに天を仰ぎ,もう一度笑顔を向けてくれました。
……
来年,東京E-Prixに行く方。これだけは伝えておきたい。
フォーミュラEのドライバーは,やさしい。がんばって話しかければ,私レベルの壊滅的な英語力でもがんばってことばを拾ってくれます。ファンのドライバーがいるなら,勇気を出して話しかけてみましょう。
そして,声を大にして言いたい。
セルジオ・セッテ・カマラは,本当に優しかった。
66戦に渡って誠実に走り続けた男は,ファンに対しても誠実で,優しかった。
だから。
来年あなたに,フォーミュラEで会えないのが,とても残念だ。
がんばれ,セッテ・カマラ。
以上が,40代の浅いモタスポファンが東京E-Prixにてセッテ・カマラに優しくしてもらった話と,ショックを受けている今日の心境です。
でも,セッテ・カマラはすでに歩みを進めています。
シーズン10終了後にはGTWCヨーロッパにスポット参戦したニュースが入ってきましたし,来期はどんなカテゴリで走るのか。故郷でストックカー・ブラジルを走る,なんてこともあるかもしれないし,いろいろと想像が膨らみます。
もちろん,シーズン12以降にフォーミュラEのレギュラードライバーで帰ってきてくれても大歓迎です。
我が家は,あなたの今後のレース人生に幸あらんことを,ブルーレイディスクのラベルと,ERTのサインカードを並べ,祈っています。
グッドラック,セルジオ・セッテ・カマラ。