2024年 1月~4月にかけて読んだ本の感想を簡単にまとめます。
雨宮まみ『40歳がくる!』
雨宮まみさんの「40歳がくる!」。デビュー前夜の作品が最後に来る構成によるものか、雨宮さんが生まれ変わってどこかで静かに暮らしているような錯覚に陥った。
— Luna MURE (@mureluna.bsky.social) Feb 11, 2024 at 13:09
故・雨宮まみのWeb連載をまとめた一冊。
雨宮さんの執筆スタイルは、自分の内側を削りだした泥とダイヤを同時に見せているようだ。
本作は、中年期に差し掛かったことによる暮らしや恋愛の変化を飾らずに書いており、美しい文章に心が打たれる。
彼が私に与えてくれていた大事なものを残らず取りこぼしてただひたすら他人の美しさに打ちのめされて、自分を嫌い、顔だってぐちゃぐちゃに傷つけたいくらいに思っていた。彼は、ちゃんと、私のことを見ていたのに。
田舎から出てAVライターを経た半生を振り返りコンプレックスにまみれた内面を描ききった『女子をこじらせて』や、 部屋を見せるのは裸を見せるようなものと語っていた『自信のない部屋へようこそ』でもそうだったが、 いつだって雨宮まみは、理想と現実の狭間でもがいていて、それを読んでいると自然と勇気が出るのだった。
國分功一郎『暇と退屈の倫理学』
なぜずっとスマートフォンをいじってしまうのだろうか?
なぜギャンブル依存になってしまうのだろう?
すべては退屈から逃れるため?
人間にとって最大の苦痛は退屈である。 人間が退屈について考え、対抗してきたことを、哲学や歴史のみならず、生物学などの知見も交えて論じた一冊。
ブレイディみかこ『他者の靴を履く アナーキック・エンパシーのすすめ』
ブレイディみかこ「他社の靴を履く アナーキック・エンパシーのすすめ」。 「エンパシーはダメ」論と「エンパシーだいじ」論について考察した一冊。 エンパシーはスキルであり使いようによって良いものにも悪いものにもなりうるとし、アナーキー(あらゆる支配への拒否)という軸をしっかりと『ぶち込まなければ!!』、エンパシーは毒性のあるものに変わってしまうかもしれない、というエンパシーとアナキズムの融合を通じてオルタナティブな世界が開ける可能性を提示している。 イギリスの政治・経済・教育の事例が豊富で、日本人やホワイトカラー職という靴を脱ぐことができ、働き方を考えるきっかけになった。
— Luna MURE (@mureluna.bsky.social) Feb 12, 2024 at 23:35
シンパシーとエンパシー。
日本語ではどちらも「共感」と訳されてしまうが、そのニュアンスは微妙に異なる。
シンパシーにはより感情的な側面が強調され、エンパシーはより理性的な方面に気を配る。
エンパシーを持つことで差別や対立を弱め、助け合いを助長するという意見がある一方で、 エンパシーによって身近で共感できる対象に支援がフォーカスされたり、自我が強い人間に利用される恐れがある。
つまり、エンパシーには良性・悪性と単純に判別することはできない。 そこで著者は、アナキズムをエンパシーとともに用いることで、エンパシーの良い側面を引き出そうと試みる。
日常生活はすでに一種の災害であり、実際の災害は私たちをそこから解放する
熊代亨『人間はどこまで家畜か?現代人の精神構造』
熊代亨著『人間はどこまで家畜か?現代人の精神構造』を読んだ。より正しくより功利的なことが優先される社会になったのは、有史以前は活発だった種を残すための生物学的な自己家畜化を、思想や社会規範を内面化していく"文化的な自己家畜化"が上書きしていったためではないか、それにうまく適応できない人が精神疾患として拾い上げられているのでは、という話。かと言って、今の清潔で秩序がある暮らしを手放すことも難しいから進歩は進歩でついていく必要はある一方で、大切なのはあまりにも本来の生物学的な部分を無視して利潤だけを求めた進化には疑問を呈していこうよ、という風に読んだ。
— Luna MURE (@mureluna.bsky.social) Mar 1, 2024 at 0:12
こうして一つ一つ振り返ってみれば、現在の私たちに内面化され、空間をも埋め尽くしている思想は、自己家畜化したホモ・サピエンスとしての行動形質を凌駕し、いわば”文化的な自己家畜化”とでも言うべきもので上書きしています。……真・家畜人がここに誕生した、と言ったら言い過ぎでしょうか。
高度に発展した資本主義社会は快適だ。 街のどこでもインターネットにアクセス可能で、道で犯罪に巻き込まれることもなく、買い物も24時間いつだって可能である。
しかし、資本の増殖だけを目的とした社会では、人間の肉体的・精神的健康を損ねてたとしても、発展の手を緩めることはできない。 現代では人間に求められる能力も高まっており、それに適応できない人から何かしらの精神疾患に陥っているのかもしれない。
そこに疑問を呈した1冊。
岩井俊憲『働く人のためのアドラー心理学 「もう疲れたよ…」に効く8つの習慣』
岩井俊憲『働く人のためのアドラー心理学 「もう疲れたよ…」に効く8つの習慣』。『嫌われる勇気』で注目をあびたアドラー心理学の指南書的な本。8つの習慣は抽象的で身につけるには時間がかかりそうだが、習慣を真似してやってみて自分に合うと思ったものを取り入れていけばいいだろう。 個人的には、「本質的な問題と小さな問題」、「自分の問題と相手の問題」を切り分けることに慣れていきたい。 8つの習慣は 1.ありのままの自分を受け入れる 2.自分を知る 3. 失敗や欠点を糧にする 4. 負の感情とうまく付き合う 5. 建設的に考える 6. 大局から見る 7. 共感する 8. 勇気を持つ
— Luna MURE (@mureluna.bsky.social) Mar 26, 2024 at 23:21
アドラーの入門書。
別の著者の『嫌われる勇気』が有名だが、そちらは記述方法が独特で多少読みづらさがある。 こちらのほうが、より簡潔に、より実践に役立つように書かれており、さらっと読むことができる。 特に難しい本を読む気力がないときにおすすめ。
リルケ著 高安国世訳 『若き詩人への手紙 若き女性への手紙』(新潮文庫)
新潮文庫 リルケ著 高安国世訳 『若き詩人への手紙 若き女性への手紙』 悩める若者から送られてきた手紙に詩人のリルケが返信した内容をまとめた書簡集的な本。 詩作への自信をぐらつかせている若き詩人に対して、「書くことを止められたら、死ななければならないかどうか自分自信に尋ねてごらんなさい」と正面から告げる部分が印象的。書く理由を他人に置くから自信がなくなるという主張にハッとさせられる。文章を書くときも、なぜ書くか、自分が書いて面白いものかをよく考えて書きたい。 基本的に若者たちが書いた手紙は付録されていないが、あとがきで紹介される女性からの手紙の情景が美しい。
— Luna MURE (@mureluna.bsky.social) Mar 26, 2024 at 23:50
postした引用部分に惹かれて読んだ。 リルケが手紙を書くのを遅れて毎回謝罪するのだが、謝罪する言葉も豊かで、全く腹が立たない。
熊代亨『認められたい』
認められるための秘訣 | 群るな #note
熊代亨さんの『認められたい』を読んで考えたことをまとめました。
note.com/sqrt/n/n893b...
— Luna MURE (@mureluna.bsky.social) Mar 28, 2024 at 7:42 PM
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しろくま先生が承認欲求について書いた本。 承認欲求をなるべく小さく生きていこう、とずっと考えていたが、少し新しい視点が入って良かった。
オリバー・バークマン著 高橋璃子訳「限りある時間の使い方」
オリバー・バークマン著 高橋璃子訳「限りある時間の使い方」。 人生の時間が限られていること、さらにそのなかの限られた範囲でしか自分はコントロールできないことを理由に、タイムマネジメントに苦心する価値観から逃れることの勧める一冊。「有限性の問題から逃れられないこと自体には、なんの問題もない」という安心感を得ることができる。 ちょうど気の向かない仕事を眼の前に広げたまま3時間ほど何も進んでいない、でも他のことに取り掛かるのは気がかりでできない、だからスマホに手を伸ばしたり本を読んだりしてその仕事から逃げている、というような状況で読んでいたので、すごく響いた。
— Luna MURE (@mureluna.bsky.social) Mar 30, 2024 at 8:29
本書の英語のタイトルは『Four Thousand Weeks: Time Management for Mortals』。
人生はたった4000週間しかない、ということを強調している。
4000週間の間にあなたは何をしますか?
効率的にタスクをこなしてもこなしても、ずっと忙しいままで少しも楽にならないという覚えはない?
人は生産性オタクになりがちだが、本当に時間を有効につかうためには「全部する」のではなく「優先度:中 は捨てる」ことが大切と書いている。
そうでなければ、人生で本当に大切なことに時間を使うことはできないだろう、ということが書かれている。
深田浩嗣『ゲームにすればうまくいく 〈ゲーミフィケーション〉9つのフレームワーク』
『ゲームにすればうまくいく 〈ゲーミフィケーション〉9つのフレームワーク』深田 浩嗣 (著) ビジネスを成功させるためには、製品やサービスを「ゲーム」にすれば良い、ということが豊富な事例とともに紹介された作品。ゲームそのものを作るのではなく、ゲームの要素を参考にすることで、ステークホルダーとの関係性を強化することが目的。本書で紹介されるフレームワークは以下。 「可視化」「目標」 「オンボーディング」 「世界観」「ソーシャル」 「ゴール」 「チューニング」「上級者向け」 「おもてなし」
— Luna MURE (@mureluna.bsky.social) Apr 12, 2024 at 23:21
どうすれば顧客を楽しませ続けられるか。
ゲームを参考にしたビジネス本。
大槻ケンヂ 『サブカルで食う』
筋肉少女帯や小説『グミ・チョコレート・パイン』などで知られる大槻ケンヂさんの『サブカルで食う』という本を読んで学んだことを書きました。 面白いのでオススメです。
サブカルで食う|群 るな #note note.com/sqrt/n/n0e8e...
— Luna MURE (@mureluna.bsky.social) Apr 14, 2024 at 22:40
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グミチョコパインでもさんざんB級映画とか本の話が出てくる大槻さんの仕事論が書かれている。
xx club の大島さんもこの本に衝撃を受けたと、どこかで言っていた。
三宅香帆『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』
三宅香帆『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』
たくさんの人に読んで欲しい。おすすめです。
この本のすごいと思う点 ・現代の働き方の問題点を「読書文化の歴史」を通じて分析 ・馴染みやすい題材(『花束みたいな恋をした』『坂の上の雲』等) ・硬くなりすぎず、砕けすぎない文体で5〜6hでサクサク読める
この本こそが、社会にノイズとして扱われてしまう本や映画の知識をフル活用して書かれている点で、ノイズに目を向けることの重要性を表しているのが非常に興味深いです。
amzn.asia/d/7nlW5v7
— Luna MURE (@mureluna.bsky.social) Apr 23, 2024 at 23:22
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半身で働きましょう、みんなで好きな時間を過ごしましょう。という本。
読書文化の歴史的変遷を学べる。
なぜ実家に全集が置かれているか気になるあなたは、ぜひ読んでみてください。
横山信弘『君が信頼されないのは話がズレているだけなんだ』
横山信弘『君が信頼されないのは話がズレているだけなんだ』 犬の絵が可愛い自己啓発本。 聞き方、確認グセ、質問テク、話し方などに分けて、コツを犬が伝授してくれる。
信頼を勝ち取れた人が仕事を得ていくという前提が、すごく日本企業的だなと思う。職場でそこまで気を使うと疲れるのでは。
不器用なトイプーが怒られ続けても全然反省せずやらかすのが可愛い。
www.subarusya.jp/smp/book/b61...
— Luna MURE (@mureluna.bsky.social) Apr 30, 2024 at 19:26
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犬の絵がかわいい。
コミュニケーションへの苦手意識が取れないが、こうやってパターン化してこなしていくのがいいのかもしれない。
伊藤亜沙『手の倫理』
美学の専門家である伊藤さんが、触覚にまつわる倫理について書いた本。
「さわる」と「ふれる」の違いや、ケアや障害者スポーツの現場を通じて考えたことが書かれている。
触れるときの一瞬のためらいや喜びが何に起因するか、そのときに何が生まれるのか、体と頭を行き来することで見えてくるなにかを書こうとしている一冊。
伊藤さんの本は『きみの体は何者か ――なぜ思い通りにならないのか? 』(ちくまQブックス) も面白い。
私達の体が動いたり話したりすることは、自然なことではなく、いくつもの動作の協調によって成り立つ不思議なものなのだ。
体の動かし方を言葉にするのはむずかしい(どうやって自転車に乗れるようになったかを子供に説明しようとしてもできない)。
吃音の当事者でもある伊藤さんの、身体を言葉に置き換える技能はすばらしい。
まとめ
全体で見ると、働くことや時間のなさについて悩んでいるように思う。
昔はもっと、やりたいことの見つけ方とか自分探しについて考えていたが、
今はすこしやりたいことが見えてきたというか、どうやったら好きなことをずっとできるかを考えているようだ。